「平和構築」を専門にする国際政治学者

篠田英朗(東京外国語大学教授)のブログです。篠田が自分自身で著作・論文に関する情報や、時々の意見・解説を書いています。過去のブログ記事は、転載してくださっている『アゴラ』さんが、一覧をまとめてくださっています。http://agora-web.jp/archives/author/hideakishinoda なお『BLOGOS』さんも時折は転載してくださっていますが、『BLOGOS』さんが拾い上げる一部記事のみだけです。ブログ記事が連続している場合でも『BLOGOS』では途中が掲載されていない場合などもありますので、ご注意ください。

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 525日、緊急事態宣言の終了が宣言された。安倍首相の記者会見の内容は良かったと思う。ただ、いつものように記者との質疑応答はまとまらないものだったので、報道される場合には、伝わっていかない部分もあるかもしれない。

 安倍首相は、「日本モデルの力を示した」と宣言した。一国の首相である。これくらい言うのは良いと思う。「日本の感染症への対応は世界において卓越した模範である」とグテレス国連事務総長が述べたことを紹介したのも、良かっただろう。日本の取り組みの批判者は、「日本のやり方は欧米と違う」、を全ての判断基準にしている。「日本モデル」の批判者は、これからはまずグテレス事務総長を批判してから、日本を批判せよ、ということだろう。

 専門家会議が言及するよりも早く「日本モデル」という言葉を使い始めた私としては、この展開を率直に嬉しく思っている。http://agora-web.jp/archives/2044935.html 

http://agora-web.jp/archives/2045006.html  http://agora-web.jp/archives/2045194.html 

 517日~24日の全国の一週間の新規感染者数を一日あたりにしてみると、わずか27人である。緊急事態宣言が発出されたときの41日~7日の一週間の新規感染者数の平均が294人であったことを考えると、1割以下の水準にまで下がった。7日移動平均値がピークとなった411日を中央とする一週間での平均は542人なので、ピーク時と比較すると5%程度にすぎないところまで下がった。

 東京を見てみると、この一週間の平均値は7.1人であり、41日~7日の平均値98人の水準の約7%である。ピーク時の411日を中央とする7日移動平均値の166.7人と比べると、わずか4%にすぎない。

 同じように大阪も見てみたいが、この一週間の平均値は1.5人と極小値に近くなってきている。41日~7日の平均値33.8人の水準の約4%で、ピーク時の417日を中央とする7日移動平均値の65.7人の約2%だが、大阪では感染者数0人が複数出たりしている。こうなってくると、もはや統計的に有意な傾向を見るのは困難だ。吉村府知事が「大阪モデル」の数値目標を調整する必要があると述べているのは、当然だろう。0人が続出した後まで、この事態を想定していなかった数値基準に捉われすぎるのは、的外れである。
 いずれにせよ、「日本モデル」の緊急事態宣言の取り組みは、劇的な減少という成功を収めて終わった。

 安倍首相は、流行の収束はウイルスがゼロになったことを意味しない、と述べつつ、リスクをゼロにするのではなく、リスクをコントロールしていくという発想が必要になる、というメッセージを出した。これも明快かつ妥当なメッセージで、良かったと思う。マスコミは報道しないのかもしれないが。

残念ながら、いつものように記者との質疑応答は、的外れなものが多く、恐らく首相記者会見が報道される際には、あえて本質的でないところが切り取られたりするのだろう。残念である。

だがこの「リスクをゼロにするのではなく、コントロールしていく」という発想は、実は日本ではかなり初期の段階から「感染拡大防止策で、まずは流行の早期終息を目指しつつ、患者の増加のスピードを可能な限り抑制し、流行の規模を抑える」という表現で、意識的に目標とされていた姿勢だ。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599698.pdf#search='%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81+%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9+%E6%9C%AC%E9%83%A8' マスコミが違う話をしているだけで、一貫して「日本モデル」はこの方針をとってきたのである。

事情が複雑なのは、クラスター対策班の西浦博教授が、恐らくこうした日本政府の方針に不満であっため、「クーデター」とも描写されるやり方で、繰り返し政府方針と異なる見解をマスコミに強調してきたことだ。https://bunshun.jp/articles/-/37379?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=socialLink 時には専門家会議の正式メンバーではない西浦教授が、専門家会議の記者会見で、座長や副座長の代わりに、断定的な見解を述べる、といった場面すら頻繁に見られた。それを面白く思ったマスコミが、政府方針や、専門家会議公式見解を飛び越えて、西浦教授のコメントを求めるようになった。

私は、「増減率の鈍化が見られる」と410日に書いていた。その5日後の415日、西浦教授は主要三大新聞社に一斉に「42万人死ぬ」の記事を掲載させた。51日、緊急事態宣言の延長が議論されていた重要な時期において、私は「ものすごい減少」が起こっていると描写していた。しかし、西浦教授は、専門家会議座長の言葉にすら反して、「期待したほどではない」と断じた。http://agora-web.jp/archives/2045808.html 

西浦モデルでは、「42万死ぬ」リスクが、「人と人の接触の8割削減」によって劇的に1カ月で収束に転じていかなければならなかった。525日にようやく全国の一日あたり新規感染者数平均27人のレベルの減少などは、期待外れなものでしかないのだ。

西浦教授のようなラディカルな考え方は、「日本モデル」に反する。

幸運だったのは、吉村大阪府知事のリーダーシップにより、「大阪モデル」が注目され、「日本モデル」が「大阪モデル」によって牽引されたことだ。「大阪モデル」が全国に影響を与える形で、緊急事態宣言は終了した。「日本モデル」は吉村府知事によって救われた。

残念ながら、小池東京都知事は、いまだ旧来の「西浦モデル」に固執している。小池都知事の「ロードマップ」は、「西浦モデル」達成への未練から、極めて要領を得ない内容になっている。

 515日、東京都新型コロナウイルス感染症対策最新情報に小池都知事と出演した西浦教授は、61日に緊急事態宣言が解除され、「元の生活に戻ったら」、その2週間後から感染者数が激増し始め、710日頃には一日200人の新規感染者数を超え、さらに指数関数的に激増し続けると、断言口調で、予言した。https://www.youtube.com/watch?v=aI8zvZAdSTM&feature=share&fbclid=IwAR2C2NIWGx7o6VFH96ZcS1o1eEcXZpRoxhpU_NbrFQy-svSDEgpVhgLHVlE 

 これはどうやら「西浦モデル2.0」のようである。この「西浦モデル2.0」は、依然として、従来からの「日本モデル」の政府方針に反している。

問題なのは、西浦教授が、しつこく「元の生活に戻ったら」という抽象概念と、「人と人との接触の2割削減」「3割削減」といった概念を用いていることだ。

 しかし、安倍首相が言う「リスクをコントロールする発想」は、2割削減より3割削減がいい、6割削減より8割削減がいい、という全てを単純化された数理モデルに還元する発想の対極にあると言ってもいいものだ。それは、むしろ「西浦モデル」を拒絶することを求める発想だ。

 「三密の回避」のような要領を得た感染拡大抑止策で、社会経済面での損失もなるべく抑える形で感染拡大予防策をとっていくことが、「リスクをコントロールする発想」だ。単純な接触機会の数値でなく、その接触のあり方を問うのが、「リスクをコントロールする発想」だ。この発想は、「西浦モデル」の否定の上に成立する。

 西浦教授は、「2割削減」などの東京都で披露した概念を、どのように測定するつもりだろうか。かつては専門家会議の会見場で、長々と渋谷駅と難波駅の人の移動に関するデータを用いて、「8割削減」がなされていないことを主張したこともあった。

 とすれば、「西浦モデル2.0」によれば、渋谷駅と難波駅の人の移動の減少が「2割」程度にとどまった場合には、3月下旬から4月中旬にかけての新規感染者数とほぼ変わらない増加が、6月中旬から開始されることになる。今後は、渋谷駅と難波駅の人の移動のデータを見ながら、「西浦モデル2.0」の検証も、随時行っていきたい。

 なお4月初旬から「WHO事務局長上級顧問」(この肩書の正式な根拠をまだ誰も私に教えてくれない)という日本でのみ用いる肩書を引っさげて各種マスメディアで「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」と主張し続けていた産婦人科医の渋谷健司・株式会社No Border代表は、5月になってからは日本の感染爆発のピークはこれからだ、などと主張の内容を変えながら、なお頻繁にメディアに登場するだけでなく、54兆円全国民PCR検査プロジェクトを、推進している。http://agora-web.jp/archives/2045987.html

 渋谷氏の最新の主張は、「第2波は必ず来る」である。https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051800661&g=int ・・・それにしても、4月初旬に日本は「手遅れ」だとメディアの寵児のようになって唱え続けていた主張は、いったいどこに行ったのか?

 通常、学者というのは、検証や分析ばかりしていると揶揄されることが多い。これに対して、渋谷氏は、全く検証や分析をせず、ひたすら予言ばかりをしている。珍しい。本当に現役の学者なのか疑われるリスクが大きいだろうと思う。それを全く気にせず、54兆円プロジェクトの推進までやったりしているというのは、本当に学者離れしている。

 「第2波」とは何だろうか。一日あたりの新規感染者数が少し増えた云々といったレベルのことを、渋谷氏ほどの経歴を持つ者が語ったりしているわけではないだろう。そもそも人の移動が戻れば、新規感染者数が増加する傾向が戻ってくるのは、安倍首相以下、日本人全員が知っている。論点にしているのは、「リスクのコントロール」だ。

 渋谷氏は、4月初旬の日本の新規感染者数がピークの時期に、「初期段階」で「手遅れ」だと言っていたわけなので、「第1波」を上回る規模で襲ってくるものが、渋谷氏の言う「第2波」であろう。また、この「第2波」が1年後か10年後か100年後に来るかはわからない、という話では意味がないはずだから、「緊急事態宣言が終了したら第1波をはるかに上回る爆発的な第2波が来る」というのが、「渋谷健司モデル2.0」であろう。

 コロナ危機は、政治学者も大きな関心を持つ大事件である。私も、緊急事態宣言後も、「日本モデル」の行方について、分析を試みていきたい。
 その過程で、折に触れて、「西浦モデル2.0」とあわせて、「渋谷健司モデル2.0」の行方も、検証し続けていくことにする。

 相変わらずテレビでは、目先の視聴率欲しさに、渋谷健司氏と並んで、54兆円全国民PCR検査を推進した小林慶一郎氏を重宝しているようだ。

 本来、160万人以上の感染者数をベースに検査するアメリカと、その16千人の感染者数をベースに検査をする日本とで、検査総数に差があったとしても、何も不思議ではない。

 また、消費税30%以上が持論の経済学者が唱える54兆円全国民検査が危険なのは、陽性判定漏れが防げず、検査に時間差ができるので意味がないのにもかかわらず、費用と感染リスクが膨大であるためでもある。クラスター対策だけでなく、空港検疫を徹底するという戦略的な検査体制の確立から注意をそらしてしまう点でも、いっそう阻害的だ。

 なぜマスコミは、内容を変えながらひたすら当たらない予言を唱え続ける渋谷健司氏や、渋谷氏と並んで54兆円全国民PCR検査を推進する消費税30%以上経済学者などを重用し続けていて、たとえば自衛隊の感染拡大抑制に対する貢献などについては、全然伝えようとはしないのか?

 3月下旬が増加率のピークだった日本の新規感染者数の拡大の背景に、欧米諸国からのウイルスの流入があったことは、すでに研究で確かめられている。したがって4月以降の増加率の減少に、入出国の規制が大きな効果があったと考えるのが当然である。

 ただし、3月下旬以降も、帰国者らの日本への入国は、限定的な形で継続していた。全員のPCR検査を実施したため、一時期は検査結果待ちをする人々が空港の段ボール箱ベッドに宿泊していることが、大きな話題となった。

 この窮状を救ったのは、自衛隊である。328日から成田空港・羽田空港において、自主派遣された自衛隊員たちが、水際対策強化にあたった。自衛隊員たちは、検疫支援(PCR検査のための検体採取)や、検査結果を待つ人々の宿泊施設への移動支援などにあたった。一時期は280名体制で、ようやく5月半ばから業者等に引継ぎを行って、段階的な撤収に入るまで、危機的だった日本の空港検疫を支えた。

 防衛省本省のおひざ元のホテルグランドヒル市ヶ谷では、検査結果待ちの帰国者・入国者の受け入れ態勢が、万全の構えで実施された。自衛隊から徹底指導を受けたホテル職員や委託業者職員が対応にあたったが、不備なく進められ、「自衛隊から民間への業務移管の初の成功例」だと言われる。といってもこれをきちんと伝えているのが、防衛省・自衛隊関連のニュースを専門とする『朝雲新聞』だけであるようなのは、寂しすぎる。

 自衛隊は、ダイアモンド・プリセンス号事件以来、新型コロナ対策の最前線で活動しながら、いまだ感染者を出していない鉄壁の体制を敷いている。この自衛隊の功績を、正当に評価しないのは、寂しい。

 ただし、それだけではない。極めて限定された数の入国者に対する検疫も、自衛隊の大々的な助けがなければ実施できなかった事実を、われわれがよく認識していないことが、もう一つの寂しさの原因だ。

 社会経済活動を動かしていくためには、永遠に鎖国しているわけにはいかない。しかし日本の感染者数16千人にたいして、世界の感染者数は540万人だ。しかも国外ではまだすごい勢いで増え続けている地域が多々ある。日本にとって開国のリスクが大きいことは否定できない。

 場合によっては、出国時・入国時に複数の検査を義務付けるくらいの徹底した検査体制は、開国の当然の前提になるだろう。自衛隊なくしても検査を実施し、検査待ちの人々・陽性判定対象者を管理していくためには、相当の準備がいる。関係者はそれをやっているのだろうか?航空業界の関係者は、「検査税」徴収による航空運賃の実質上昇があっても、万全の体制で開国をすることが長期的な利益になることがわかっているのではないだろうか?

経験豊富になった自衛隊関係者の知見をよく吸収し、それをふまえた対策をとっていくことが重要だ。今後の空港検疫体制の充実を、実質指導してほしい。

いずれにしても、緊急事態宣言下における感染拡大抑制の隠れた英雄である自衛隊の多大な貢献を、無駄にすることがないように、よく記憶にとどめておきたい。

 519日は、47日に緊急事態宣言が発出されてから、6週間がたったところだった。そこでこれまでの大きなトレンドをまとめてみたい。全国の各週の一週間の新規感染者数と、それを前の週の新規感染者数と比較したときの増加率である。

 

51319日:          358人: 0.54

5612日:            662人: 0.44

429日~55日: 1,497人: 0.63

422日~28日:    2,345人: 0.69

415日~21日:      3,386人: 0.89

48日~14日:        3,796人: 1.84

41日~7日:       2.061人: 2.17

325日~31日:     947人: 3.08

 

 国際的な水準にてらして、劇的な減少だと言っていい。一週間の新規感染者数は、3月中旬の水準になった。次に東京都を見てみよう。

 

51319日:          83人: 0.41

5612日:          200人: 0.30

429日~55日: 648人: 0.85

422日~28日:    760人: 0.76

415日~21日:    996人: 0.85

48日~14日:    1,167人: 1.69

41日~7日:     688人: 1.93

325日~31日:  355人: 1.95

 

  これもやはり劇的な減少である。東京都は緊急事態宣言の効果が全国平均よりも4月中は鈍かったが、5月に入ってから巻き返した。東京では、平日よりもゴールデンウィーク連休中により大きな移動の減少が図られたのだと思われる。一週間の新規感染者数が83名というのは、小池都知事が最初の自粛要請を行う前の3月中旬の水準である。

 「大阪モデル」で「日本モデル」を牽引している大阪府も見てみよう。

 

51319日:       24人: 0.37

5612日:         64人: 0.48

429日~55日: 133人: 0.65

422日~28日:   204人: 0.44

415日~21日:     455人: 1.10

48日~14日:       413人: 1.74

41日~7日:       237人: 2.32

325日~31日:   102人: 3.4

 

 劇的な減少であり、一週間の新規感染者数は、やはり3月中旬の水準になっている。

 これまでずっと指摘しているように、増加率のピークは3月下旬で、4月に入ってからは増加率の鈍化が始まり、4月中旬以降は減少に転じた。そして今も減少率は加速する一方である。この結果、新規感染者数は、大幅増加が見られる前の3月中旬の水準に戻った。3月下旬から4月中旬にかけての増加率の高まりを、その後の1か月の減少で元に戻したのである。欧米の「厳しいロックダウン」でも、これだけの劇的な減少を示した事例は珍しい。

 4月に入ってすぐに増加率の鈍化が始まっている背景として考えられるのは、第一に、3月中旬以降に段階的に導入されて入国制限措置があるだろう。これによって国外からウイルスが持ち込まれるルートが遮断された。第二に、3月の三連休の前後で大阪と東京で移動・外出自粛要請が出されたことによって、すでに3月下旬から人の移動の減少が始まっていたことは指摘しておきたい。加えて第三に、3月下旬以降に、今は常識となった「三密の回避」などの行動変容の意識改革が、本格的に国民に広がったことも、私には看過できない。今は「三密の回避」があまりにも常識化しているので忘れられているが、この一大行動変容原則が、社会に浸透し始めたのは、319日の専門家会議「状況分析・提言」以降であった。http://agora-web.jp/archives/2045006.html 

 もちろん4月中旬以降の劇的な減少を見れば、47日以降の緊急事態宣言にも相当な追加的な効果があったと考えていいだろう。緊急事態宣言の効果は2週間目以降にしか効果が出ないはずだと言う人もいるが、実はほとんどの発症者は、感染から5日程度で発症すると言われている。4月中旬からの新規感染者数の劇的な減少に、緊急事態宣言の効果が含まれていると考えるのが自然だろう。

 この素晴らしい国民の努力に対して、「期待したほどではない」、と言い放った人物がいる。「8割おじさん」西浦博教授である。http://agora-web.jp/archives/2045808.html 西浦教授は、「42万人死ぬ」で有名だが、「人と人との接触を8割削減して一カ月で収束」命令を国民に発していた人物でもある。その西浦教授からすれば、世界でも類例を見ないような減少でも、期待外れなものでしかない。西浦教授は、現実の他の事例と日本の事例を比較するなどということは、決してしない。常に自分が作成した抽象的な数理モデルとだけ現実を比較し、現実が数理モデル通りに動いていないと、期待外れだ、と言ってのけるのである。

 池田信夫氏は、「『42万人死ぬ』シミュレーションはどこが間違っていたのか」と問いかけた。http://agora-web.jp/archives/2046128.html?fbclid=IwAR0J3rINbhlk2geOuHs1jMj4T6TaOrkbORGd2oCV9uWDFpLcglxMEpKKNmA 他方、私は「西浦教授は国民を騙したのか?」と問い、次のように書いた。

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 最近になって西浦教授が「間違い」を認めるようになったと言う人もいるが、私はそうは思わない。国際政治学者の私が410日の時点ですでに自信を持ってはっきりと「増加率の鈍化が見られる」と書けたのだから、私以上に数字を追いかけていたはずの西浦教授が、そのことに気づいていなかったはずはない。

西浦教授は、全てを知りながら、ただ国民を脅かすという政治的意図を持って「42万人死ぬ!」をやっていた、と考えざるを得ない。徹底した国民の自粛行動を引き出して、収束効果の増加を果たした後、最後の一人をクラスター班で撲滅させる、という願望にもとづいた行動だろう。要は、正義感にもとづいて、あるいは野心にもとづいて、国民を騙したのである。http://agora-web.jp/archives/2046115.html 

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 確信犯として動いている西浦教授は、現状に満足していない。さらに一層の「人と人との削減」を求めて、当たるはずのない予言を出し続けている。全ては、どこまでも人々を脅かすためである。

 515日、東京都新型コロナウイルス感染症対策最新情報に小池都知事と出演した西浦教授は、61日に緊急事態宣言が解除され、「元の生活に戻ったら」、その2週間後から感染者数が激増し始め、710日頃には一日200人の新規感染者数を超え、さらに指数関数的に激増し続けると、断言口調で、予言した。https://www.youtube.com/watch?v=aI8zvZAdSTM&feature=share&fbclid=IwAR2C2NIWGx7o6VFH96ZcS1o1eEcXZpRoxhpU_NbrFQy-svSDEgpVhgLHVlE

 小池都知事は、西浦教授の追っかけファンのようになっている。そのため、西浦教授が、カリスマ熟女キラーのようだ。しかし発言内容に中身がない。小学生のお絵かきのレベルだ。

 かつて西浦教授は、何もしないと41日に1,000人を超えた東京都の累積感染者数は、一か月後には8万人になる、と予言していた。「期待外れ」とはいえ、緊急事態宣言で、ようやく5,000人まで抑え込んだということのようだが、最初から8万人になるというモデルが奇妙なものだったのは明らかだ。

そもそも西浦教授の予言で、今まで当たったものはない。結局、人を脅かすことが目的で予言者のように熟女の前で振る舞っているだけなので、最初から予測をするつもりなどなかった、というのが真相であるとしか思えない。

 西浦教授は、自分の予言がどうして当たらなかったのか、といった分析は、一切しない。脅かすことだけが目的の予言だったからだろう。最初から真面目な予測を試みるつもりなどないので、後で反省したり分析したりすることもない。

 さすがに今は、7月半ばに東京都に8万人の感染者が生まれる、と言うのは控えるようだ(なぜなのか理由は説明がないので不明だが)。そこで、「元の生活に戻ったら」3月から4月半ばの新規感染者の動きが再現される、と予言することにしたらしい。しかしこれでは、「同じ形の山をもう一つ書いてみました」と言っているだけの話なので、小学生でもできる作業であり、大学教授の「専門家」がわざわざ東京都知事に講釈してみせるような話ではない。

 西浦教授は、東京都知事と都民に対して、「元の生活戻ったら」という表現を、「タイムマシンに乗って31日に戻ったら、31日以降の生活が繰り返される」といった意味のないことを言うために用いている。しかし、緊急事態宣言解除日が、「タイムマシンに乗って31日に戻る」こととは全然違うことは、自明である。入出国規制が緊急事態宣言とセットで撤廃されるという話は聞こえてこない。「3密の回避」の浸透をはじめとする社会意識の度合いも全然違う。「タイムマシンに乗って31日に戻ったら、31日以降の生活が繰り返されるので、もう一つ同じ形の山を書いてみました」と、感染症数理モデルの専門家が熟女に講釈して見せることに、いったい何の意味があるのか?意味不明だ。

 吉村大阪府知事の「大阪モデル」は、西浦教授のモデルと決別し、ロジカルな路線を進んでいる。http://agora-web.jp/archives/2045885.html 他方、西浦=小池べったりコンビは、徹底して情緒的かつ扇動的だ。自分たちの意地と感情にもとづいて1,400万人の都民の生活を動かそうとする。ところが、後で責任をとるつもりは、一切ない。研究者でありながら、分析は全くせず、ただひたすら予言、予言、予言、予言、予言と、ひたすら当たらない予言だけを語り続けている。

 何度も書いていることだが、安倍首相の感染症対策本部も、尾身茂氏の専門家会議も、「長期戦」を見据えた国民の行動変容を重視している。大阪府が、東京都に先行して移行段階に入ったのは、「長期戦」を見据えた行動変容を訴えているがゆえにだ。

 ところが西浦教授は、このような社会の動きに、真っ向から挑戦する。東京都知事とともに、「三密の回避なんて甘すぎる、とにかくさらにいっそうの人と人との接触の削減に努めてください!」と訴え続ける。

 519日・20日の東京都の新規感染者数は5人ずつである。人口約1,400万人の都民がいて、たったの5人ずつである。この状況で、なお西浦教授・小池都知事べったりコンビは、「気を緩めてはいけない!さらにいっそうの人と人との接触の削減に努めてください!」と訴え続け、そうでないと恐ろしいことが起こるのです!と必死で恐怖心を煽り続ける。

 本当にそれでいいのか?本当に「専門家」の肩書を与えられた者とは、何を言っても責任を取る必要がなく、しかも後で思い出して検証したりする必要もない特権的地位を持つ者のことなのか?

 私は、むしろ一連のコロナ危機における「専門家」の発言と行動は、徹底して継続的に、検証し続けていかなければならないはずだ、と考えている。

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