「平和構築」を専門にする国際政治学者

篠田英朗(東京外国語大学教授)のブログです。篠田が自分自身で著作・論文その他の情報や、時々の意見・解説を集めています。以前にホームページとして掲載していた情報ともリンクさせています。

『現代ビジネス』に2016年の世界の紛争状況を鳥瞰する拙稿が掲載されました。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50566

ところでわざわざリンク許可を申請するほどではないと思いつつ、『現代ビジネス』さんにご迷惑をおかけしてもいけないなと思い、紛争数に関するデータベースに対するリンクは、上記の文章では割愛しておきました。私は通常UCDPを使っていますが、国連等も通常はUCDPを使うのを標準としており、学生にも「特に理由がなければこれを使っておけば疑問視はされないもの」と言ってあるものです。http://ucdp.uu.se/ Peter Wallensteenが統括している限り、信頼度は下がらないでしょう。Peter自身は、昨年お会いして会話した際、2010年代の紛争数の激増の理由を総括するにはまだ時期尚早だと言っていました。失礼ながら、統計をとっている方は、これくらいのほうが、かえって信頼度が高いです。

  先のブログ記事で「駆け付け警護」という語は使わないほうが望ましいという趣旨の文章を書いた。そうした経緯もあり、12月16日にパネリストとして登壇させていただいた防衛省国際平和協力センター主催の「文民の保護」をテーマにしたシンポジウムでも、私自身は改正PKO法にふれる場合でも、あえて駆け付け警護という語は使わないでおいた。
 その機会にも述べさせていただいたが、結局、今回のPKO法の改正は、起こりうる不測の事態に対応した自衛隊員が、望ましくない形で違法行為を疑われるような事態が発生することを防ぐための「違法性阻却措置」であったと考えるべきものだろう。「駆け付け警護」というと、何やら積極的に進んでどんどん駆け付けて、目についたものを片っ端から守るために武力行使をしていく、といったイメージが出てきてしまう。実際の法律は、むしろ不測の事態が発生した場合に、違法行為の有無をめぐる不必要な議論が起こってくることを防ぐ措置として意味を持っている。
 シンポジウムでも強調したが、国連PKOに従事している者の武力行使を誘発するのは、日本の法律などではなく、現地の実情である。現地が危険であれば、やむをえず武器を使用せざるをえない場面が増えることは間違いない。違法性の疑いがありうる余地があるように見えても、現実が緊迫していれば、現実に対応するための緊急避難措置としてやむを得ない手段をとらざるをえない場面が起こりうるということだ。他方、現実が平穏であれば、日本の法律がどうだからといって、むやみやたらに武器使用をしたがるような者はいないだろう。
 国連PKOに従事して活動している者に、自分自身を自己保存権に基づいて防衛するのは合法だが、同僚の国連職員を守るのは違法だ、などと言い続けるのは、あまりに非現実的だと言わざるを得ない。自分を守っているのか、同僚を守っているにすぎないのか、自衛隊の管理下にある国連職員を守っているのか、管理外の国連職員を守ってしまったのか、などを緊急事態においてもすべて厳密にチェックしてから行動するのでなければ違憲だ、などと言い続けるのは、犯罪的なまでに現実離れしたことだと言えるだろう。
 南スーダンが緊迫した情勢にあるのは間違いない。そこに自衛隊員を送った政策当事者が、非現実的な憲法議論から自衛隊員を守る責任をとろうとするのは、当然のことだと思う。国連PKO要員となった自衛隊員が、国連職員を守るための措置をとると違法者になるかもしれないといった混乱を放置しておかないための措置が、今回の改正PKO法の措置であったと考えるべきだろう。
 もっともこのような違法性阻却を明確化する明文規定が必要になったのも、もともとは歪な憲法解釈が、高度経済成長時代に蔓延してしまったからである。物事をストレートに考えれば、そのような明文規定すら必要ではなかったはずだ。
  冷静になって考えよう。国連PKO要員が同僚の国連職員を守ろうとすると、「国権の発動たる戦争(war as a sovereign right of the nation)」を行ったことになり、「国の交戦権(the right of belligerency of the state)」を発動したことになる、などという議論が本当に真面目なものであるかどうかを。
 もう一度考えてもらいたい。「国権の発動たる戦争」や「国の交戦権」は、日本人が日本人を守る「個別的自衛権」であれば行使されていないが、国連要員が国連安保理の決議にしたがって同僚の国連職員を守る行動をとると「国権の発動たる戦争」や「国の交戦権」を行使していることになる、などという議論が本当に真面目なものであるかどうかを。

言論プラットフォーム『アゴラ』(池田信夫氏)における「今年の良書」で拙著『集団的自衛権の思想史』を一位としてあげていただきました。「圧倒的ベストワン」とまで評していただき、大変に光栄です。http://agora-web.jp/archives/2023137-2.html
以前に『アゴラ』では池内恵さんによる、拙著およびそれを自己紹介した『シノドス』記事への反応を取り上げていただきました。http://agora-web.jp/archives/2021951-2.html 
これには細谷雄一さんも反応していただき、http://blog.livedoor.jp/hosoyayuichi/archives/2016-10-10.html
ニコニコ動画のモーリー・ロバートソンチャンネルに出演させていただいた際の紹介文にもなりました。 http://www.nicovideo.jp/watch/1480013645 (Youtubeありhttps://www.youtube.com/watch?v=zhtXH4gzPek
なお池内さんには拙著『国際紛争を読み解く五つの視座』についても好意的に取り上げていただきましたね!http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161031-00010007-agora-int


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