私は、現行憲法が軍隊を持つことを禁止していない、と考えている。同時に、3項追加改憲案に賛成である。その理由は、憲法解釈が定まらない不利益が大きいので、解釈を確定させるための措置をとることが、適切だと思うからだ。日本人は、数十年にわたり、憲法9条に信じられない規模の労力と無駄を注ぎ込んできた。国民投票をやってでも、解釈を確定させることは、合理的だと思う。
自衛隊合憲論でありながら3項追加を支持する私の立場について、岡山大学法学部の小塚真啓准教授が、「知的**(**は差別用語)というレベルの愚」、「狡猾とも言うべき卑劣」評して、ツィッターで拡散させている。https://twitter.com/masa_koz/status/902269328539639809もし憲法学者の方々が、「篠田の憲法解釈でよい」と学会決議でもしてくれれば、あるいはせめて報道ステーションが「アンケートで9割の憲法学者が篠田説に納得」とでも報じてくれれば、もちろん私は改憲不要論に転ずる。だがそのようなことが起こる可能性は、ゼロ、である。世界がひっくり返っても、日本の憲法学者が、70年余にわたって培ってきたプライドと社会的地位を投げ捨てて、篠田の存在などを認めるはずはない。したがって私には、解釈を確定させるための3項追加案を支持するしかない。「知的**(差別用語)」かもしれないが、仕方がない。日本社会の圧倒的多数の人々は、総理大臣を含めて、たとえ「**」などと差別されることになるとしても、3項追加なりの措置による解釈の確定を支持するしかない。
この点に関しては、世論でも賛成が多めに出ているようである。そこで、今回の衆議院選挙でも、少し踏み込んだ議論がなされている。10月11日に開催された党首討論において、希望の党の小池百合子代表が、自衛隊だけを憲法で明文化することは、防衛省背広組による文民統制の点で疑義がある、と発言したという。私自身は、文民統制の本質は内局支配だとは考えないので、小池代表の言い方には、すっきりしないものは感じる。諸国の憲法においても、文民統制とは、最高司令官が大統領であることを定めることなどによって、成立している。背広組による制服組の統制は、文民統制のことではない。
そのうえでなお、私は、憲法典に「自衛隊」という語を入れる措置を、名案とは考えない。というのは、憲法典で明記されているのは、国会、内閣、裁判所、といった国家中枢レベルの機関名なので、自衛隊、という一組織の固有名詞の名称を憲法典に書きこむのは、奇妙だからだ。9条の主語が「国民」になっているため、文言上、自衛隊は国民直轄の特別組織になり、たとえば自衛隊の組織改編が国民主権の問題になってしまうのも、厄介である。
ちなみに自民党の憲法改正草案では、「国防軍」が樹立されることになっていた。これは「自衛隊」から名称変更されるものであったらしい。しかし、維持するものが自衛隊と同じなら、名称は同じ「自衛隊」がいい。ただ、その「自衛隊」が「軍隊」であることを明記することが重要だ。
憲法は自衛権行使手段として用意される「軍隊」の保持を禁止していない、という解釈を確定させることが重要だ。それは名称を変えることではない。諸国の憲法でも、憲法典では一般概念としての「軍」の存在を規定しながら、実際の軍隊の固有名詞は別途定めることがある。合衆国憲法で記載されている「army」と「navy」は軍一般を指す概念として解釈されるので、空軍や海兵隊が憲法典に登場しないことは問題にならない。ドイツ基本法が定めるのは「軍隊(Streitkräfte)」で、実際の軍隊の名称である「連邦軍(Bundeswehr)」ではない。
拙著『ほんとうの憲法』では、「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」、という文言を提案した。つまり私は、自衛隊、という言葉よりも、「軍隊」、という言葉を、憲法典に明記したほうが意味が大きいと考えている。自衛隊という言葉を入れるだけだと、最悪の場合、「自衛隊は軍隊なのか?」という俗説的な問いが残されてしまう。そもそも通常法で発明された特定の組織名称を、憲法典が後追いで事後追認するのは、奇妙である。
より意味が大きいと思うのは、「軍隊」が合憲であることを、明白にすることである。そのうえで、「軍隊」としての自衛隊を通常法で規定すれば、「自衛隊は軍隊なのか?」という哲学的な問いに思い悩む必要がなくなる。実際の問題からしても、自衛隊の存在の合憲性をはっきりさせるだけでなく、自衛隊が「軍隊」として存在していることをはっきりさせたほうが、意味が大きい。軍としての規律が必要になる場合に、いちいち躊躇したり、ごまかしたりしなくて済むからだ。
以前に書いたことがあるが、日本政府の見解でも、自衛隊は憲法上の「戦力」ではないが、国際法上の「軍隊」である。http://agora-web.jp/archives/2027868.html しかしこのことが国民に全く知られておらず、誤解にもとづいて「自衛隊って軍隊じゃないんですよね?」という俗論がまかり通ってしまっている。「自衛隊って軍隊じゃないんですよね?」が流通したまま、憲法に自衛隊という語を入れても、混乱が残るだろう。
「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」、といった路線の3項追記を、是非検討していただきたいと思っている。もちろん憲法学者の方々に検討して頂ける可能性はゼロだが、せめてその他の方々には、是非検討して頂きたいと思っている。
自衛隊合憲論でありながら3項追加を支持する私の立場について、岡山大学法学部の小塚真啓准教授が、「知的**(**は差別用語)というレベルの愚」、「狡猾とも言うべき卑劣」評して、ツィッターで拡散させている。https://twitter.com/masa_koz/status/902269328539639809もし憲法学者の方々が、「篠田の憲法解釈でよい」と学会決議でもしてくれれば、あるいはせめて報道ステーションが「アンケートで9割の憲法学者が篠田説に納得」とでも報じてくれれば、もちろん私は改憲不要論に転ずる。だがそのようなことが起こる可能性は、ゼロ、である。世界がひっくり返っても、日本の憲法学者が、70年余にわたって培ってきたプライドと社会的地位を投げ捨てて、篠田の存在などを認めるはずはない。したがって私には、解釈を確定させるための3項追加案を支持するしかない。「知的**(差別用語)」かもしれないが、仕方がない。日本社会の圧倒的多数の人々は、総理大臣を含めて、たとえ「**」などと差別されることになるとしても、3項追加なりの措置による解釈の確定を支持するしかない。
この点に関しては、世論でも賛成が多めに出ているようである。そこで、今回の衆議院選挙でも、少し踏み込んだ議論がなされている。10月11日に開催された党首討論において、希望の党の小池百合子代表が、自衛隊だけを憲法で明文化することは、防衛省背広組による文民統制の点で疑義がある、と発言したという。私自身は、文民統制の本質は内局支配だとは考えないので、小池代表の言い方には、すっきりしないものは感じる。諸国の憲法においても、文民統制とは、最高司令官が大統領であることを定めることなどによって、成立している。背広組による制服組の統制は、文民統制のことではない。
そのうえでなお、私は、憲法典に「自衛隊」という語を入れる措置を、名案とは考えない。というのは、憲法典で明記されているのは、国会、内閣、裁判所、といった国家中枢レベルの機関名なので、自衛隊、という一組織の固有名詞の名称を憲法典に書きこむのは、奇妙だからだ。9条の主語が「国民」になっているため、文言上、自衛隊は国民直轄の特別組織になり、たとえば自衛隊の組織改編が国民主権の問題になってしまうのも、厄介である。
ちなみに自民党の憲法改正草案では、「国防軍」が樹立されることになっていた。これは「自衛隊」から名称変更されるものであったらしい。しかし、維持するものが自衛隊と同じなら、名称は同じ「自衛隊」がいい。ただ、その「自衛隊」が「軍隊」であることを明記することが重要だ。
憲法は自衛権行使手段として用意される「軍隊」の保持を禁止していない、という解釈を確定させることが重要だ。それは名称を変えることではない。諸国の憲法でも、憲法典では一般概念としての「軍」の存在を規定しながら、実際の軍隊の固有名詞は別途定めることがある。合衆国憲法で記載されている「army」と「navy」は軍一般を指す概念として解釈されるので、空軍や海兵隊が憲法典に登場しないことは問題にならない。ドイツ基本法が定めるのは「軍隊(Streitkräfte)」で、実際の軍隊の名称である「連邦軍(Bundeswehr)」ではない。
拙著『ほんとうの憲法』では、「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」、という文言を提案した。つまり私は、自衛隊、という言葉よりも、「軍隊」、という言葉を、憲法典に明記したほうが意味が大きいと考えている。自衛隊という言葉を入れるだけだと、最悪の場合、「自衛隊は軍隊なのか?」という俗説的な問いが残されてしまう。そもそも通常法で発明された特定の組織名称を、憲法典が後追いで事後追認するのは、奇妙である。
より意味が大きいと思うのは、「軍隊」が合憲であることを、明白にすることである。そのうえで、「軍隊」としての自衛隊を通常法で規定すれば、「自衛隊は軍隊なのか?」という哲学的な問いに思い悩む必要がなくなる。実際の問題からしても、自衛隊の存在の合憲性をはっきりさせるだけでなく、自衛隊が「軍隊」として存在していることをはっきりさせたほうが、意味が大きい。軍としての規律が必要になる場合に、いちいち躊躇したり、ごまかしたりしなくて済むからだ。
以前に書いたことがあるが、日本政府の見解でも、自衛隊は憲法上の「戦力」ではないが、国際法上の「軍隊」である。http://agora-web.jp/archives/2027868.html しかしこのことが国民に全く知られておらず、誤解にもとづいて「自衛隊って軍隊じゃないんですよね?」という俗論がまかり通ってしまっている。「自衛隊って軍隊じゃないんですよね?」が流通したまま、憲法に自衛隊という語を入れても、混乱が残るだろう。
「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」、といった路線の3項追記を、是非検討していただきたいと思っている。もちろん憲法学者の方々に検討して頂ける可能性はゼロだが、せめてその他の方々には、是非検討して頂きたいと思っている。
コメント
コメント一覧 (6)
加憲案をググってみると「自衛隊」という固有名を書き込まないが、「軍隊」というワードは避けた文言が多そうですね。
http://www.sankei.com/premium/news/170523/prm1705230001-n1.html
ここにでてくる伊藤哲夫は「確立された国際法に基づく自衛のための実力」、枝野幸男は「自衛権に基づく実力行使のための組織」という言い方をしているようです。
ただ伊藤案は「確立された国際法に基づく」という文言はいるのかなーと思います。国が自衛する権利は、国際法があろうがなかろうが国自身にアプリオリにある(と設定されてる)ものなんじゃないのかな。「確立された」とわざわざ書いてるから、時間をかけてできた慣習のニュアンスが入ってしまう気が。単純にこの部分は文言上はバッサリカットして問題ないように見えます。
あと枝野案は「組織」と書くと自衛隊という組織だけに必要以上に限定してしまいそうで、篠田案の「軍隊を含む組織」の『を含む』はそこを意識してるのかなと思いました。
おそらく、国内法上は、自衛隊は、防衛省の「特別の機関」(国家行政組織法8条の3、防衛省設置法19条1項)という国の行政組織という位置づけで、しかも、ポジティブ・リスト方式で統制されていることからすると、憲法9条2項に反しないように、「軍隊」的側面を除去しているからと思われます。これを国内法上は軍隊ではないと答弁すると国際法上の取扱いと齟齬をきたすので、答弁を避けて、憲法9条2項の制約下にあり、通常の観念での軍隊とは異なるという趣旨の答弁で、お茶を濁しているのでしょう。
篠田先生の提案のとおり、憲法上、「軍隊」と位置付け、国内法と国際法の上記のねじれ現象が解消されれば、国際法の制約に基づいた国際標準の安全保障議論になることを期待しています。
http://www.mod.go.jp/j/press/sankou/report/kaikakukaigi_080521b.pdf#search=%27%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A+%E7%89%B9%E5%88%A5%E3%81%AE%E6%A9%9F%E9%96%A2+%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E8%A1%8C%E6%94%BF%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%B3%95%27
http://www.asaho.com/jpn/index.html
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