シエラレオネが中国からの融資で新空港を建設する計画をキャンセルした。このニュースが、日本で少しでもシエラレオネを語る理由になりうるのであれば、とても嬉しい。http://agora-web.jp/archives/2035163.html
私自身はシエラレオネには数えきれないくらい行っているのだが、日本大使館もなく、日本での知名度はゼロに等しいだろう。学生相手に話題にする際には、「『ブラッド・ダイアモンド』って映画あったでしょ、ほらレオナルドディカプリオが出ていた・・・」、という話題の切り口だけはある。しかし、話が続くことはない。しかもこの切り口も、あと何年もつのか。私ですら、日本人向けの文章でシエラレオネを話題にすることは少ない。
それでもなぜ何度も行くのかと言えば、重要だからである。国連の公式サイトにでも行ってほしい。国連の平和活動は紛争社会を平和な社会に変えた!と主張する際に、真っ先に証左として例示するのが、シエラレオネであることがわかる。https://peacekeeping.un.org/en/our-successes
今年の大統領選挙で、中国寄りとされたコロマ前政権に代わり、ビオ新政権ができた。そこで中国へのスタンスにも見直しが入った。
私自身は、シエラレオネ大学の平和紛争学部と共同研究をしたり、学生もこれまで10人近く受け入れたりしてきている(私は大学院授業を全て英語でやっているので)。ビオ新政権発足にともなって、長く付き合っていた平和紛争学部長のプラット氏は、大臣として任用されてしまった。しかし代わって学部長になったのは、広島大学で私の指導下で博士号を取得したアレックスである。
シエラレオネが成功例とされるのは、単に15年にわたって戦争が起こっていないからではない。戦争が終わってから、平和裏に選挙を通じた二回の政権交代を果たした。内戦後の社会では、これは大変なことなのである。特に2009年、選挙後に暴動が発生した後、二大政党が建設的な政党政治のありかたについて定めた「共同宣言」を発出し、その後の安定につなげたのは、世界の平和構築の事例の中でも特筆すべき、輝かしい記録だ。
地方部に行ってワークショップなどをすると、「戦争は苦しかったが、戦後に人権がよりよく守られる社会になったのは良かった」、と女性たちが口をそろえて言う。
人権や法の支配といった、国際社会の主流の価値観を標榜する形で、紛争後の平和構築が進められた。その成果を現地の人々が好意的にとらえているのが、シエラレオネである。だから国際機関や主要な援助国は、シエラレオネを評価するのである。
世界最貧国の一つである。国連開発計画の人間開発指標で、189か国中184位である(これでも15年前より少しマシになった)。近年多くのアフリカ諸国は、中国も利用して、高い経済成長を維持してきている。シエラレオネも例外ではない。近年中国との関係を深め、5%前後の経済成長率を維持している。現在のルンギ空港の不便さは並大抵ではない。シエラレオネに、中国との関係を悪化させる余裕はない。しかしシエラレオネのような国だからこそ、多角的な外交関係を基盤にした政治リーダーの役割は大きい。
それにしても、日本は、「大使館がないから」といった理由で、簡単にシエラレオネを軽視しようとする。ないなら、作ればいいだけなので、あまり説得力のある言い訳ではない。要するに、軽視しているだけだ。
中国の一帯一路は、アフリカに到達した後も、大陸を貫いて大西洋岸にまで到達している。日本が推進する「インド太平洋」戦略は、かろうじてアデン湾くらいをかすめて、それで終わりか。「戦略」の戦略的内実が問われている。
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興味深かったのは、ユダヤ人を主軸とする世界のダイヤモンド取引の構図であった。妻の知見だけでは間に合わなかったので、当時いろいろ調べた。
ロンドンと並ぶ欧州のダイヤモンド取引の拠点で、欧州最大のユダヤ人コミュニティーがあるベルギーのアントワープ(アントウェルペン)=往時のアンヴェルス(Antvers)は、リヨン(Lugdunum)をしのぎ17~18世紀に欧州の出版の一代拠点でもあったことは知っていたが、内戦当事国の外貨獲得手段になっている、「紛争ダイヤモンド」(Diamants de conflits)でも重要な舞台だった。
内戦当事者の戦争資金源になっているとの国連の報告が提出されたのが1998年だが、実際に事態解決に動いたのはダイヤモンド産業側で、業界で紛争ダイヤモンドを防ぐための対策強化の決議を採択した2000年7月の世界ダイヤモンド会議の開催地がアントワープだった。
決議は、ダイヤモンドの輸出輸入時の認証システムを求め、すべての加盟国に対して公式に封印されたダイヤのパッケージのみを受け入れる法の成立を促したもので、併せてすべての加盟国に紛争ダイヤを移送したすべての者を刑罰に処すことを求めている。その後、各国政府、ダイヤモンド会社、NGOの交渉を経て2002年11月に所謂「キンバリープロセス認証制度」(KPCS)が採択された。
シエラレオネは遠い国だ。ディカプリオ主演の映画‘‘Blood Diamond’’ は私も観たが、「血塗られたダイヤ」は、この世界の陰画なのかもしれない。
例えば、10月7-8日、両日にわたって東京で、アフリカ開発会議(TICAD)で開かれた。TICADとは,Tokyo International Conference on African Development(アフリカ開発会議)の略であり,アフリカの開発をテーマとする国際会議である。1993年以降,日本政府が主導し,国連,国連開発計画(UNDP),アフリカ連合委員会(AUC)及び世界銀行と共同で開催している。会議内容の詳細は、https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/
この会議に、安倍首相も出席されているが、その内容について、我々は、外務省のHPを見なければ、わからない。普通の生活をしていると、SNSでこの情報が届かなければ、あったことも知らない。
テレビでは、終日、大相撲協会を引退した貴乃花親方が、次回の参議院選挙に出るか、どうかを大問題にして報道している。日本の政治課題として、どちらが重要なのだろう?
日本は、シエラレオネのような天然資源はなく、あるのは、人的資源、教育程度が高く、相手の気持ちを慮ることのできる協力的な、自分の利益だけを求めない人々。ダイアモンドもないし、石油も、天然ガスもないが、部族紛争もない。問題は、現在の日本の文明生活は、日本にないダイアモンド、天然ガス、がないと成り立たない、ということなのである。現在は、少子化の影響で、超高齢化に歯止めがかからず、人的資源も、危なくなっているが。
そういう「アメリカ」や「中国」のようではない、「日本」という国の現実を知ると、日本には、「国際協調路線」が、「地球を俯瞰する外交」が、必要だ、ということがわかるのではないのだろうか?
なぜ私が、反氏のクレマンソーの賛美のコメント投稿以来、反氏に対する態度を変えたか、読者にはわかっていただけると思う。
なぜならこれは、「平和構築」の為のブログだからである。
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