「平和構築」を専門にする国際政治学者

篠田英朗(東京外国語大学教授)のブログです。篠田が自分自身で著作・論文に関する情報や、時々の意見・解説を書いています。過去のブログ記事は、転載してくださっている『アゴラ』さんが、一覧をまとめてくださっています。http://agora-web.jp/archives/author/hideakishinoda 

2020年04月

 47日に緊急事態宣言を出した際、安倍首相は、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」と述べた。

 その日から3週間がたった428日の時点での様子を見てみたい。

これまでの『検証』と同じやり方で、東京都の週ごとの動向を見てみよう。累積感染者数(括弧内は新規感染者数)と前の週と比べた時とのそれぞれの増加率である。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

 

42228日: 4,059 人( 753人): 1.22倍( 0.76倍)

41521日: 3,307人( 988人): 1.42倍( 0.87倍)

48日~14日: 2,319人( 1,125人): 1.94倍( 1.67倍)

41日~47日: 1,194人( 673人): 2.29倍( 1.92倍)

325日~31日: 521人( 350人): 3.04倍( 3.46倍)

 

 私は、一連の『検証』シリーズで、4月になってから増加率の鈍化が見られ、さらに4月中旬からは新規感染者数は減少傾向に転じたことを指摘してきた。現在も、この傾向が顕著に続いている。

 全国的な傾向も見てみよう。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

42228日: 13,422 人( 2,448人): 1.22倍( 0.70倍)

41521日: 10,974人( 3,465人): 1.46倍( 0.93倍)

48日~14日: 7,509人( 3,692人): 1.96倍( 1.91倍)

41日~47日: 3,817人( 1,930人): 2.02倍( 2.43倍)

325日~31日: 1,887人( 792人): 1.72倍( 2.57倍)

 

 これまでの『検証』で確認してきたように、4月に入ってから増加率の鈍化が認められた全国の新規感染者数だが、東京と同じように、4月中旬以降に減少傾向に入り、それは今週も続いた。

 減少傾向に入っていることは画期的であり、国民の努力の成果として、素直に賞賛すべきものだと私は考えている。

 日本よりも厳格とされるロックダウンを導入した欧米諸国の中の幾つかの国々は、死に物狂いで増加率の停止にまでこぎつけても、なかなか顕著な減少傾向を作れずに苦しんでいる。これまでも何度か示してきFinancial TimesJohn Burn-Murdoch氏の「片対数スケール」のグラフで新規感染者の増減率の比較を見てみよう。https://www.ft.com/coronavirus-latest  

 アメリカやイギリスは、何とか増加率の上昇を止めたものの、なかなか下降傾向に入れないで苦しんでいる。これに対して、日本が下降モードに入り始めた様子がわかる。

 これについてクラスター対策班の西浦博・北海道大学教授は、424日に、次のように述べたという。「患者はねずみ算式に増えていたが、410日ごろから伸びがやや鈍り、今週に入ってさらに鈍化した・・・。感染から潜伏期間を経て診断を受けるまでの時間を考慮すると、小池百合子都知事が325日に外出自粛を要請した効果とみられる。」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200424-00000161-jij-soci&fbclid=IwAR3XsZ45Sx_EchADWXYR7fPLtq8-sF8RO8yJWW2NNOPbl3RJ9MbozxJsqys 

この認識は、この『検証』シリーズで私が繰り返し述べてきていることと、同じである。(西浦教授の場合、絶大な政治的影響力を保持しているので、政治家のように『緩みも懸念される』ので『対策の徹底を要請』と政治発言をしなければならないのだが)。

この状況にいたって、大きな混乱が見られているようだ。特に週の初めに少なめの新規感染者数が発表されると、テレビのコメンテーターが動揺し、数字を信じるな、政府の陰謀だ、といったことを力説し、少し新規感染者数が増える日があると安堵する、といった現象が起こっているようである。さらには月曜・火曜のワイドショーが盛り上がらないので、週末をはさんだ後の新規感染者数の報告が減る傾向を何とかしろ、と無茶苦茶な要求までしているようだ。

曜日に偏差があるのは当然なので、John Burn-Murdoch氏ら世界中のウォッチャーが7日移動平均を採用している。私も大枠を掴むために週単位の数字で動向を見ている。曜日の偏差が気になるなら、自分で週単位の比較をすればいいだけだ。
 ところがほんの少しの努力もしない代わりに、月曜・火曜のワイドショーも盛り上げるために週末もたくさん検査をしろ、と要求するという態度には、茫然とする。私を含む国民のほとんどは、粛々と家にこもっているというのに、テレビ番組で「週の初めもワイドショーが盛り上がる数字を持って来い」と叫んでいる人たちは、いったいどこまで偉いのか。

相変わらずPCR検査数が少ないので、数字は信用できない、という主張も根強い。しかし検査数で絶対数の見え方を抑え込むことはできるかもしれないが、増加率に恣意的影響を作り出すのは、簡単ではない。まして曲線を描く変動を、検査の絶対数だけで操作するというのは、ほぼ不可能だろう。報告された数字それ自体の改竄を行うのでなければ、曲線の操作はできないと思う。

こうした常軌を逸した主張をするコメンテーターばかりがテレビ番組に出演するのは、やはり渋谷健司氏のような方が、何週間も前から「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」と主張し続けているからだろう。

以前は皇后・雅子様の双子の妹君との離婚と、即座の年下女子アナと電撃再婚で話題を作り、今回も華麗に機会に応じて肩書を使い分けるなど、切れ味抜群の「産婦人科医」の渋谷氏に魅了されているので、テレビのコメンテーターは皆、「数字は信じられない、信じられるのはあの産婦人科医の渋谷健司氏の言葉だけだ」、という気持ちになるのだろう。

渋谷氏には、学者生命を賭けて、すでに起こっている日本の感染爆発を証明する義務がある。

精緻な学術論文はもう少し時間がかかるということであれば、日本の雑誌がいくらでも、渋谷氏の学者生命を賭けた日本の感染爆発証明論文を掲載してくれるはずだ。

まさか今さら、新規の大型契約の受注がないと公表しない、などということはないはずだ。

日本の迷えるTVコメンテーターを救うために、産婦人科医・渋谷健司氏は、学者生命を賭けて、一刻も早く日本の感染爆発を証明する論文を公表せよ。

(渋谷健司氏については、肩書が多彩であるために、どのように紹介していいか、いつも迷う。渋谷氏は、日本のマスコミでは、「WHO事務局長上級顧問」である。ところが海外のメディアで英語で日本批判をする際には、「元WHO職員(former WHO official)」になる。渋谷氏が代表を務める上杉隆氏が社主である株式会社No Border代表としての肩書は、「WHOコーディネーター」である。

 渋谷氏は、2001年からWHOに勤務し、200508年に「coordinator for the Health Statistics and Evidence Unit」というコーディネーターの肩書を持った。https://www.who.int/bulletin/volumes/84/3/news10306/en/ 東京大学は、この「コーディネーター」職しか、渋谷氏とWHOの関わりを認めていない。http://www.ghp.m.u-tokyo.ac.jp/profile/staff/kshibuya/ したがって渋谷氏は、海外では、「元コーディネーター」の「元WHO職員」であるようだ。ここまでは情報が確認できる。

しかし日本では、肩書は変わる。たとえば渋谷氏が創設して2012年にPresidentに就任した「Japan Institute for Global Health (JIGH)」という団体の紹介文では、200508年のWHOとの関わりは「Coordinator」ではなく「Chief」ということになっている。http://jigh.org/en/about/ 

Chief」の肩書で登場する職務の部分は、渋谷氏の自己申告で作成されている経歴のようなので、「Coordinator」が「Chief」になった経緯は不明である。また、さらに現職として日本のマスコミで「WHO事務局長上級顧問」になる経緯も不明である。WHOが公式に公表している「Senior Advisor」や「Special Advisor」の中には渋谷氏は含まれていない。https://www.who.int/dg/who-headquarters-leadership-team WHOの幹部職員である私の知人に聞いてみたところ、WHOの職員リストには渋谷という人物は出てこないので、可能性としては、契約コンサルタントか何かではないか、とのことであった。

なお渋谷氏はもともとは産婦人科医である。また、公衆衛生の論文執筆はあるようだが、感染症に関する業績は見つからない。)

 47日に緊急事態宣言を出した際、安倍首相は、「東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります」と述べた。

 東京都の累計感染者が1,000人を超えたのは、今日426日からちょうど3週間前の45日であった。426日現在の東京の累積感染者数は3,908人である。5日前の1.18倍にとどまっている。5日で2倍になるペースとは、1日約15%増のペースだが、この5日間は1日平均3.4%程度のスピードで増加しているに過ぎない。

 ちなみに5日間で2倍になるペースとは、7日間で約2.66倍になるペースである。したがって緊急事態宣言の際に安倍首相が言及したペースが続いていれば、426日の東京の累積感染者数は、2.66万人程度でなければならない。しかし実際は3,908人である。

 すでにこれまでの『検証』シリーズで見てきたように、オリンピック中止が決まった324日翌日の325日小池東京都知事「自粛要請」会見の影響が出始めた4月に入った頃から増加率の鈍化が見られ、47日緊急事態宣言の影響が出始める43週目には鈍化がさらに進んだ。この傾向が緊急事態宣言発出から2週間をすぎた421日以降も続き、現時点で、新規感染者数の減少の傾向は、よりはっきりしてきている。

前回の『検証』と同じやり方で、週ごとの動向を見てみよう。累積感染者数(括弧内は新規感染者数)と前の週と比べた時とのそれぞれの増加率である。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

 

42026日: 3,908人( 827人): 1.26倍( 0.81倍)

41319日: 3,082人( 1,015人): 1.49倍( 0.98倍)

46日~12日: 2,067人( 1,035人): 2.00倍( 1.71倍)

330日~45日: 1,032人( 602人): 2.87倍( 2.06倍)

 

東京の新規感染者数は、明らかに減少傾向にある。次に全国レベルでの傾向を見てみよう。https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

42026日: 13,031人(2,812人): 1.27倍( 0.78倍)

41319日: 10,219人( 3,603人): 1.54倍( 1.05倍)

46日~12日: 6,616人( 3,425人): 2.07倍( 2.21倍)

330日~45日: 3,191人( 1,544人): 1.93倍( 1.24倍)

 

やはり新規感染者数の減少傾向が認められる。

 安倍首相は47日に「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」とも述べていたが、この目標は達成されている。
 もっとも減少を目指す目的は、医療崩壊を防ぐことにあるはずなので、どこまでの減少が必要かは、医療体制の充実との相関関係で評価されることになると思われる。

 これに対して、「西浦教授が主張する『人と人との接触機会の8割削減』がまだ達成されていない」という理由で、目標達成の評価を覆そうとする人もいるようだが、倒錯している。「8割削減」は「感染者数の減少」の手段なのであって、その逆ではない。手段を目的と勘違いするのは、一番典型的な工程管理の落とし穴である。

 減少に転ずる様子については、藤原かずえ氏が丁寧にグラフ化して、ピークは412日だったと述べている。http://agora-web.jp/archives/2045626.html 結局、いわゆる「3月の気の緩んだ3連休」の影響が出きったところがピークだったということだ。そして325自粛要請、加えて47緊急事態宣言の効果が出る時期になって新規感染者数の増加には歯止めがかかった。非常に簡明な話ではないかと感じる。 

もっとも渋谷健司「WHO事務局長上級顧問」(日本のメディア用肩書)あるいは「元WHO職員」(海外メディアではこちらの肩書になる)「WHOコーディネーター」(渋谷氏が代表を務める上杉隆氏が社主である株式会社No Border代表就任時の肩書)のように、学者生命を賭けて、何週間も前から「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」と主張し続けている「専門家」=「WHO事務局長上級顧問」兼「元WHO職員」兼「WHOコーディネーター」もいるので、事情は複雑だ。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000072.000042473.html?fbclid=IwAR3C18mCTITYpi5XogpSOXAtvcZwy7C8JnU1wpidTtdKwAVnTmuyg-uA4tA (ツィッターで上昌広氏などが、やたらと渋谷氏はすごいのだ!と言ったことを主張しているようだが、そんなことはどうでもいいので、渋谷氏には、日本で何週間も前から感染爆発が起こっていたことを証明する論文を、学者生命を賭けて、早く公表してほしい。)

 「専門家」は、藤原かずえ氏のような分析を、拒む。そしてただひたすら「思考を停止せよ、そしてただ8割削減せよ」といったようなことを述べ続ける。http://agora-web.jp/archives/2045621.html 実際にクラスターを起こした事例の研究分析など一切ない。「ロックダウンせよ!」と叫び続けるのでなければ、ただ、「あ!公園に人がいる!これでは8割削減達成できない!」、といったような話だけを熱心に行っている。

もはや何が目的なのかは忘れ去られ、手段の一つでしかなかったはずの「人と人の接触の8割削減」目標が、完全に崇高で唯一の目的と化してしまっているのだ。現実世界ではどんな形で感染が進んでいるかといったことは忘れ去られ、「思考を停止せよ、ただ8割削減だけを考えよ」、だけが独り歩きを始めてしまっている。

 どうやら「専門家」は、422より前に感染者増加の鈍化が見られたのが気に入らなかったらしい。422日には、状況分析については、口を閉ざしていた。それでも西浦教授は、質疑応答で、記者に強いられて「鈍化が始まっているのは確実」と述べた。ただし、それでも、なぜ「42万死者」モデルは実現していないのかについて説明をするつもりは一切ないようである。

 それどころか、驚くべきことに、NHKの番組に出演した西浦教授は「ようやく今週末に減少に転じたが、期待したほどの減少ではなかった」と、数字や根拠や考え方も一切示さず、ラフに語った。 https://twitter.com/PeachTjapan2/status/1254056259285704704 

 「42万死者」はどうなったのか? いったい誰が「劇的な減少を期待」したのか? なぜようやく「今週末から」なのか? 西浦教授以外の日本人のほとんどは、「42万死者」を予測しない代わりに、「劇的な減少への期待」も表明してもいなかったのではなかったか? 緊急事態宣言2週間後までは増加しないといけないので、減少は「今週末」からでないと認めない!などという頑なな気持ちは、西浦教授以外には誰も持っていないのではないか?

 西浦教授は、感染者を減少させて、クラスター対策を再開して、ウイルスの撲滅までもっていきたいかのような壮大な願望を、繰り返し語っている。https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/cluster-japan-senmonka?utm_source=dynamic&utm_campaign=bfsharefacebook&ref=mobile_share&fbclid=IwAR0F2ag5bqCD4dWfrDZ7f_mK-6lGd07varZeB7TnPFXUhK3f_2ObZuSewOI 

 多くの人々が、ワクチン開発か、集団免疫の実現でもなければ、撲滅はできないと考えている。しかし、西浦教授は、クラスター対策の再開によるウイルスの撃退を夢見ている。

 目標設定は、西浦氏の仕事ではない。専門家なら、複数の政策に応じた複数の可能性を提示して、政策決定者の判断を助けることに努めるべきだ。専門家が自分の心の中で勝手に政策目標を設定し、その目標の実現に役立つかどうかを判断基準にして数字や発言を操作していくのは、危険な状態である。それなら、まず、その目標の妥当性を議論の俎上にのせる意見を述べるべきだ。

私が大学時代に聞いた逸話を思い出す。
 当時、キャンパスでオウム真理教の勧誘が盛んだった。その頃に聞いたジョークがある。「麻原彰晃は、破局的な事件の勃発を予言した。ところがなかなか事件が起こらない。そこである信者がなぜ起こらないのかと尋ねた。すると麻原は答えた。『私が止めているのです』と。」

 当時、そんな話で友達と笑い合っていたのだが、この話には恐ろしいオチがあった。麻原は、その5年後くらいに、このやり取りが通用しなくなってしまったため、仕方なく自分で地下鉄サリン事件を起こしたのである。

麻原のような人物は、「解脱できないのはお前の精進が足りないからだ」、といったロジックも駆使する。自分の権威を維持するという目的が絶対になると、現実の事象を否定したり、叱責したりせざるをえななくなる。

42万死者・8割削減収束」下の日本人も、麻原と向き合っている信者と同じような心理状態に置かれている。信じなければ破局(42万人死者)が訪れると言われる。そこで破局を回避してくれる尊師を信じて行動するのだが、どこまでいっても解脱(収束)は得られない。すると尊師は「それはお前が怠慢だからだ」と叱責する。解脱を目指す信者たちは、そこで死ぬまで尊師の奴隷となる。

数理モデルは、架空の抽象的条件で算出した計算式でしかない。したがって、計算ミス以外には、間違いというものがない。モデルに現実が屈服するようになると、世の中の事象が「破局(42万死者)」に進まなかった場合には、「私が警告したので最悪の事態を避けることができた」とか言っておけばいい。そうでなければ、「日本政府が事実を隠蔽しているだけで、実はもう感染爆発は起こっている」、とでも言えばいいのだろう。

また、もし「解脱(収束)できる」という計算が実現しなかった場合には、「私の期待通りにお前が動かなかったからだ!」と他人を責めておけば、それで済む話だ。

42万人に震え上がった素直な性格の方々は、猛然と「8割削減」教に突き進む。そして「あそこに外出している奴がいる、ああ!まだ公園に人がいる!」といった魔女狩り運動に奔走する。

しかし、わずか数か月の間に世界で300万人以上を感染させたコロナウイルスを、日本においてだけ収束させるなどというのは、常識で考えれば、気の遠くなる壮大な作業である。しかも「人と人との接触の8割削減」を12千万人の1か月の生活の中で完全に測定するのは不可能だ。たとえ指標を100にしても、1000にしても、無理だ。全ての家庭に隠しカメラを設置しても、まだ無理だろう。ただ、結果だけが、「8割」の達成基準なのである。収束を達成するまで、「8割削減」したことにはならない。

そもそも驚くべきことに、西浦教授は、「医療と性風俗には残念ながら介入ができないと仮定して、一般の人口でそれを補填して、二次感染の平均値を1より下げるにはどれぐらい必要か見て、正確に言うと79%という数字が算出されました」、と「8割」の根拠について語っている。と同時に、自分は「2月の前半から厚労省に詰めています。厚労省近くのホテルを転々として、いつも空いているところはないか探しています。」という自らの生活ぶりについても語っている。https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura?fbclid=IwAR3ocYbmkCggDo2wgwFsQVnXKg64NDUJIKE_nZXl3Zo9RzPtU_3bA-U7CW4 ということは、医療にも性風俗にも従事していないのに、外出自粛していない西浦教授のせいで、もう最初から「8割」は無理だったのだ!

ずっと人並みに自宅にこもっている私としては、魔女狩りをする人の気持ちがわかるような話である。

しかし西浦教授は悪くない。なぜなら、専門家だからだ。

悪いのは、西浦教授以外の国民である。国民は、この状態に置かれてしまったら、ほぼ永遠に自らの怠慢を恥じ、不徳をお詫びし、永遠に奴隷のように、自宅から魔女狩りを叫び続けるしかない。

この閉塞感には、どこかで既視感がある。憲法9条信仰だ。

狂信的な憲法9条教の信者たちは、冷静な憲法9条の解釈論に応じることすらしない。ただ、憲法9条を信じれば、必ず世界は平和になる、という計算式から議論を始める。そして憲法9条を信じない者がいるために世界は平和にならないという理由で、他人を非難する魔女狩りを始める。憲法9条は常に絶対に正しいという前提から出発すれば、期待した通りの世界が訪れないのは、すべて憲法9条を信じない連中がいるからだ、という結論しか導き出されない。

なぜ実効再生産数を2.5にして計算するのか、という指摘があるように、私は狂信的な憲法9条信者に対して、なぜ国際法を無視した解釈を通説とするのか、と指摘し続けている。すると、憲法学者からは「篠田は蓑田胸喜(極右という意味)だ!」という叱責の言葉をもらい、魔女狩りされそうになる。

憲法9条教の狂信的でおかしな解釈は、実際の政策では、採用されていない。それは政策当局者が怠慢だったり邪悪だったりしたためでなく、宗教的な理念モデルが、現実に適用できなかったからだ。

現下の「8割削減」教の布教活動についても、同じように冷静に見つめておく姿勢が必要だろう。「8割削減」に本気になるあまり、自らの怠慢を責め続け、あるいは魔女狩りに明け暮れる日々を続けていっても、数理モデルと現実とのギャップに、ますます苦しでいくだけに終わると思う。

教条的な憲法9条信仰も、平和文化の普及という意味では、意味があった、という議論もあるだろう。8割削減も、同じように、突き放して一つのスローガンとして見るなら、効用があるかもしれない。

だが「8割削減」を、あたかも来世の幸せを約束する宗教教義のように狂信的に捉えてしまったら、やがて現実とのギャップに苦しむことになるだろう。

 緊急事態宣言から2週間がたった422日、専門家会議が会見を開いた。今まで何度か専門家会議の会見を見たが、いちばん曖昧だったような印象を受けた。

これまでも強調してきた提言あるいは要請、たとえば保健所の強化、などがあらためて訴えられた。まあ、それはもちろん重要だ。ただ、2週間という節目で会見を開いたという点を考えると、いささか物足りなさは残った。冒頭から、緊急事態宣言の効果を評価するのはまだ早い、今日は評価めいたことは一切しない、という立場を全員が繰り返し述べ続けたため、2週間の節目で会見を開いたことの意味がなくなってしまったのだ。

 それでも質疑応答の中で、質問者に強いられて、西浦教授は、「東京で感染者増の鈍化が始まっていることは確実」、という見解を披露した。https://www.youtube.com/watch?v=8Bu0TBScn90 (1時間1145秒頃から)

 すでに私が繰り返し「検証」シリーズで見てきたように、http://agora-web.jp/archives/2045600.html  安倍首相による47日緊急事態宣言においては、2週間目の地点における新規感染者増の「ピークアウト」がとりあえず直近の目標とされていた。この目標が達成された、という見解を、私と同様に、西浦教授は披露したのだ。ただし、その見解は、奇妙なことに、記者に質問されて強いられて答えたものにすぎず、なるべく強調したくないような雰囲気の中で、披露された。

 もう少し様子を見ないと2週間目の評価も確定的に言えない、という一般論はあるだろう。だがそれよりも、国民意識の弛緩が訪れることを心配したので、あらかじめ評価を口にしないようにするという取り決めを関係者間で図っておいた、そんな雰囲気に見えた。

 この点に関して、いくつかの懸念がある。

 第一に、最高責任者である安倍首相が緊急事態宣言の際に明言した直近の目標が、完全に無視されていいのか、という問題である。もちろん2週間目に何が起こっているのかということ自体には、途中経過としての意味しかないというのはわかる。だが、だからといって、最高責任者の首相の発言を専門家会議が軽視しているのだとしたら、それは決して望ましい事態だとは思えない。国民が、いったい今何が起こっているのか把握できない不安に駆られる材料にもなる。

 第二に、「人と人との接触の8割削減」スローガンの独り歩き傾向が顕著に見える。西浦モデルにそうことが目的になりすぎて、手段の目的化が生じてきていないか、心配になる。8割削減は、感染者数を減らして医療崩壊を防ぐ、という目的に役立って初めて、意義を持つ。たとえば何らかの任意の指標にもとづいて8割削減を達成したと言える状態を作っても、感染者数が減っていなければ、何の意味もない。それどころか血眼になって8割削減をした国民は、無駄に疲弊をしただけ、という結果に終わるので最悪である。「まだ8割削減は達成されていない」、「鈍化が始まっていることは確実」、「まだ緊急事態宣言の効果は評価できない」、「コロナ流行とは向こう1年は付き合わないといけない」といった断片的に語られる発言が、どのように目的・手段関係で結ばれているのか、全く定かではない。余計なことは考えず、それでどうなるのかということも問いかけたりせず、ただひたらすら盲目的に8割削減のことだけを考えて生きてほしい、と頼まれても、なかなかすっきりした気持ちになれない人が多いのではないだろうか。

 第三に、上記の諸点と関係する点だが、専門家会議の関心に偏りがないか心配になる。例えばそれは一言でいうと、飛沫感染重点主義、の傾向である。今回の「人との接触を8割減らす10のポイント」を例にとろう。これは「人との接触8割削減を実践するためには」の細かな指針である。だが10もポイントがあると、なぜこれらの10なのか、なぜ12でもないのか、といったことが気になる。10もポイントがあるが、全て「人との接触を8割減らす」ためだけのポイントなので、真面目な人であればあるほど、その点だけに取り組んで、恐らく飛沫感染の可能性を下げるが、かえって接触感染への意識を薄めてしまう、といった現象も起こりかねないように感じる。

4月上旬にクラスターが発生した国立病院機構大分医療センター(大分市)における感染経路は、タブレット端末などを介して感染が広がる「接触感染」だったと推定されている。https://www.yomiuri.co.jp/national/20200408-OYT1T50171/ こうした実例があるにもかかわらず、専門家たちは血眼になって「人との接触の8割減少」を崇高な目的とし、そのための指針は10出しても、接触感染対策については全くふれようともしない、という姿勢をとり続ける。なぜクラスター発生を起こした接触感染の実例は完全に無視して、まだクラスター発生の実例がない公園における人との接触を撲滅することに血眼になって取り組もうとするのか。論理的な理由がないように感じる。

私見では、「三密の回避」は、クラスター発生の防止という明確な戦略的意義があり、「超重点分野」であるがゆえにシンプルなメッセージの効果が期待された素晴らしいものだった。これに対して、「10のポイント」は「人との接触8割削減」の詳細な解説でしかなく、長期の目的や全体的な体系が説明されないことをかえって明らかにする。社会科学者の私に言わせれば、本来測定不可能なものについて、ただ色々なことを詳細に言って情報量の多さで補おうとするのは、全体像を見失わせる危険をはらんだ行為である。

あるいは時系列的な経緯を誤認していないだろうか?3月下旬以降の感染者数の増加が従来のクラスター対応の効果を低下させた、という専門家層の認識がある。それと323日頃から小池都知事が強調して急速に人口に膾炙するようになり、4月以降の感染者数増加抑制に役立った、国民の行動変容メッセージとしての「三密の回避」の成功は、別の事柄である。「三密の回避」がクラスター班の発見から生まれていることを知っているがゆえに、専門家層が二つの別の事柄を混同していないか、気になる。3月下旬以降、クラスター対応に限界が生まれたが、その一方で「三密の回避」メッセージは効果を高めた、現在でも依然として有効である、というのが、本当のところではないだろうか?クラスター対策班の発見の意義を活かすことではなく、クラスター対策班という人間集団のことだけに専門家層が気を取られているように見えるのは、懸念材料だ。

とはいえ、いずれにせよ、直近の注目点は、渋谷健司氏の動向である。渋谷健司「WHO事務局長上級顧問」(日本のメディア用肩書)あるいは「元WHO職員」(海外メディアではこちらの肩書になる)は、何週間も前から「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」と主張し続けている。10万人の感染者が、感染爆発を広げ続けている真実を、すでに学者生命を賭けて、繰り返し雑誌やテレビで報告し続けている。

「鈍化したことは確実」などという篠田と見間違うかのような西浦教授の発言を許しておけるはずはない。黙っていれば、「臨床経験の乏しい医師によるロジックのみを操った危ない話」などとも言われてしまいかねない。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200420-00622587-shincho-soci&p=1&fbclid=IwAR1DYo0dl4TQXylg1lYVQAe8H35BXXmT2mwaMksC-RZQwamY6S-PJmdFtSQ  皇后雅子様の双子の妹君との離婚直後の年下女子アナと電撃再婚で話題を作ったり、華麗に日本と海外で肩書を使い分けたりもする渋谷氏だ。もうすぐ何か派手なやり方で、学者生命を賭けて、西浦教授にも反証してくるだろう。どうなるのか、楽しみである。

(*なお渋谷氏の正式な現在のWHOの肩書については知人を介して調べてみたが、職員リストにはないので契約コンサルタントか何かではないか、と言うこと以上はわからなかった。)

 緊急事態宣言が47日に発出されてから、21日で2週間となった。最初の宣言は7都道府県だけが対象だったとはいえ、14日が一つの節目であることは確かだろう。

 ただし、21日と22日の間で大きな変化が訪れる、ということではない。新型コロナの潜伏期間が14日だとはいえ、大多数の発症者は56日で発症すると言われている。すでに緊急事態宣言の効果は出始めていたと考えるべきである。

 安倍首相は、47日に次のように述べていた。

――――――――――

東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。

――――――――――

これをふまえて、東京の様子を見てみよう。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/ 曜日による偏差をなくすため、週ごとの様子を、最終日の累積感染者数(括弧内はその週の新規感染者数)で示す。あわせて、一つ前の週と比べたときのそれぞれの増加率を示す。以下の通りである。

 

41521日: 3,304人( 985人): 1.42倍( 0.87倍)

4814日: 2,319人( 1,125人): 1.94倍( 1.67倍)

41日~7日: 1,194人( 673人): 2.29倍( 1.92倍)

32531日: 521人( 350人): 3.04倍( 5.07倍)

 

東京では、325日小池都知事「自粛要請」会見後に目に見えた人の移動の減少が見られた。http://agora-web.jp/archives/2045275.html 私は325日以降に「日本版ロックダウン第1段階」が導入されたと考えるべきだ、と言ってきた。47日緊急事態宣言は、その効果を増幅させるための「日本版ロックダウン第2段階」と考えるべきものである。その段階的な措置にそって、3月下旬に大幅な上昇を見せた感染者数の増加率は、4月に徐々に低下してきた。421日時点の累積感染者数は、「1万人」ではなく、「3,304人」である。

結果として、安倍首相が設定した目標どおり、緊急事態宣言から2週間後の時点で、新規感染者数の増加を止めるという意味での「ピークアウト」が達成された。

全国的な傾向を見てみよう。全国に緊急事態宣言が適用されるようになったのは、5日前の416日だった。これはいわば「日本版ロックダウン第3段階」と呼ぶべきものだっただろう。ただし、もともと感染者増加の傾向は、東京(圏)が牽引している傾向が強かった。したがって東京が中心になってとられてきた段階的な措置は、全国的な傾向にも反映されてきていることは、前回までの「検証」で見てきたとおりである。

あらためて421日までの全国の様子を見てみよう。(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

41521日: 10,974人(3,465人): 1.46倍( 0.93倍)

4814日:   7,509人( 3,692人): 1.96倍( 1.91倍)

41日~47日: 3,817人(1,930人): 2.02倍( 2.43倍)

32531日: 1,887人(792人): 1.72倍( 2.76倍)

 

東京ほど劇的ではないものの、全国的な傾向としても、3月下旬に非常に高かった増加率は、4月に入って鈍化し始めた。そして21日までの直近の一週間では、遂に新規感染者数が前の週の新規感染者数を下回った。全国においても、安倍首相が設定した目標どおり、緊急事態宣言から2週間後の時点で、新規感染者数の増加を止めるという意味での「ピークアウト」を達成したのである。

もちろんこの達成の功績は、一人一人の国民の努力によるものだ。

国内外の「専門家」たちによる「手ぬるい、日本は失敗だ、破滅だ、感染爆発だ」という酷評を覆し、「日本モデル」の緊急事態宣言を通じて、日本国民は、2週間後に到達したかった最初の目標をクリアしたのである。

私は、電車に乗って通勤する会社員がいるとか、吉祥寺を歩いている若者がいるとかを、批判的に責め立てる風潮が好きではない。数多くの会社員は、やむにやまれず通勤して日本経済を維持し続けてくれながら、夜の町には行かずに無言ですばやく帰宅したりして、協力していたのだ。

各人には各人の事情があり、各人なりの社会への貢献がある。事情を知らずに、家の外にいる、といった光景だけで、テレビスタジオや霞が関のビルで特権意識にかられて働き続けている者が、自分のことを棚に上げて、他人を批判するのは、間違っている。

日本国民は、一人一人がそれぞれのやり方で、この「日本モデル」の緊急事態宣言に取り組んでいるのだ。そのことは素直に認めるべきではないだろうか。

ただし、私は、油断は禁物だとも思う。私は、BCG予防接種や集団免疫が日本人の感染率を下げているとは思っていない。むしろ基礎疾患度の低さに代表される保健状態に始まり、耐性のある伝統文化や社会インフラなどの環境要因が全体的な効果を持ちながら、「日本モデル」のやり方での緊急事態宣言に取り組む国民意識の高さが、それなりの結果を出しているのだと思っている。

私は、楽観論者ではない。317日に、私は次のように書いた。

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314日の安倍首相の会見以降、コロナ問題について、楽観的な雰囲気が出ているように感じる。欧米諸国における混乱ぶりを見て、日本は上手くいっている、と多くの人々が感じている。

危険だろう。

伸び方が欧米諸国より鈍いだけで、感染者も死亡者も右肩上がりで増え続けていることに変わりはない。日に日に感染者は日本全国に蔓延していっているのだ。2週間前、3週間前よりも、感染しやすいということだ。安心しているような状況ではない。http://agora-web.jp/archives/2044893.html 

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 私が書いたとおりだった。3月中旬の緩んだ雰囲気は、3月下旬からの感染者数の急激な増加という現象をもたらした。

 421日の時点で増加率を1以下にしたという達成は、現実的な考え方で、誇るべき達成である。一部「専門家」が主張しているような、あと2週間でコロナを終息させる、などという非現実的な夢物語とは、違う。国民の努力で増加率を下げたのだとしたら、油断したら、また増加率は上がる。終息は、世界中の人々が甚大な努力を続けて、まだ誰も達成できていない壮大な目標だ。安易に実現可能だと宣伝すべきものではないはずだ。

もっとも大学教員の渋谷健司「WHO事務局長上級顧問」(日本のメディア用肩書)あるいは「元WHO職員」(海外メディアではこちらの肩書になる)のように、何週間も前から「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」と主張し続けている「専門家」もいる。(*なお渋谷氏の正式な現在のWHOの肩書については知人を介して調べてみたが、職員リストにはないので契約コンサルタントか何かではないか、と言うこと以上はわからなかった。)

 渋谷氏は、ロンドンの自宅にこもりながら、独自の画期的な調査能力を駆使して、政府統計の10倍の10万人の感染者が日本国内にいることを把握し、学者生命を賭けて、日本の雑誌やテレビを通じ、その調査結果を報告し続けている。

離婚直後の年下女子アナと電撃再婚で話題を作ったり、華麗に日本と海外で肩書を使い分けたりもする渋谷氏だ。もうすぐ何か派手なやり方で、学者生命を賭けて、「日本はすでに感染爆発している」主張のエビデンスを出してくるだろう。

「臨床経験の乏しい医師によるロジックのみを操った危ない話」などと言われて黙っているはずはない。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200420-00622587-shincho-soci&p=1&fbclid=IwAR1DYo0dl4TQXylg1lYVQAe8H35BXXmT2mwaMksC-RZQwamY6S-PJmdFtSQ 新規の契約がなければ公表しない、などということはないはずだ。

 渋谷氏が、学者生命を賭けて、日本にすでに感染爆発が発生していることを証明する論文を発表したとき、われわれは学ぶことができるだろう。学者は存在している事実を見て謙虚に現実を分析しなければいけないこと、抽象的な一般論だけで具体的な事例を理解したつもりなってはいけないこと、海外の大学院で教わらなかったということは世の中に存在していないことの証明にはならないこと、などを学ぶことになるだろう。

  4回目の緊急事態宣言の「検証」になる。国際政治学者の私が継続して書いているのは奇異だが、「専門家」がやってくれないので、仕方なくやっている。

日本のメディアで活躍する「専門家」と言えば、「42万人死ぬ8割減らせ」で有名な西浦博・北大教授/クラスター対策班メンバーや(メディアは専門家会議メンバーとも紹介するがhttps://www.j-cast.com/trend/2020/04/07383835.html?p=all 政府公式専門家会議メンバーリストには西浦氏の名前はないhttps://www.cas.go.jp/jp/influenza/senmonka_konkyo.pdf )、何週間も前から「日本は感染爆発の初期段階」「日本は手遅れ」「喫緊の感染爆発」を主張し続けている大学教員の渋谷健司「WHO事務局長上級顧問」(日本のメディア用の肩書)あるいは「元WHO職員」(海外メディアではこちらの肩書になる)などばかりが活躍している。

https://www.news24.jp/articles/2020/04/05/10620503.html 

https://bunshun.jp/articles/-/37301?page=4 

https://edition.cnn.com/2020/04/17/asia/japan-coronavirus-medical-workers-hnk-intl/index.html?fbclid=IwAR1bfxgPzPLKTlrzl0KIayzI68CjcDXzj8lC6PIXOMpR7a8XmZb4r5bPjFY 

(*なお渋谷氏の正式な現在のWHOの肩書については知人を介して調べてみたが、職員リストにはないので契約コンサルタントか何かではないか、ということ以上はわからなかった。)

それにしてもロンドンの自宅にこもっているだけであるはずの渋谷「WHO事務局長上級顧問」・「元WHO職員」は、どうやって政府統計の10倍の10万人の感染者が日本国内にいる、と把握し、日本のテレビで報告できたのか?すごい調査能力である。http://jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-04-18/2020041801_04_1.html 

 渋谷氏は、以前は、皇后・雅子様の双子の妹君との離婚と、即座の年下女子アナと電撃再婚で話題を作ったことのある人物である。https://jisin.jp/domestic/1623641/?fbclid=IwAR11tFO5FX01hSfTbvTcl-OgzcilISdLfKwYYZUr2gQsr0UTfhi_ja7VwXI https://zaitakudemamawork.com/2018/04/03/funahashiakie/ https://corocoro-tabi.com/shibuyasetsuko-husband-marrige 今回も、日本のメディアと海外のメディアで肩書を使い分けるなど、切れ味抜群の方のようだ。

私が知っている政治学の分野では、新聞やテレビでこんな発言ばかりしていたら、学者生命が終わるかどうかの瀬戸際になる。渋谷氏はよほどすごい調査をしたのだろう。そうでなければ12千万人の人生を左右するようなことを簡単にテレビで主張できるはずがない。学者生命の全てを賭けて、新聞やテレビで発言している専門家(肩書は変幻自在)には、つくづく感服する。

 私のような三流学者は、学者生命を賭けて秘密の調査結果を披露する余裕はない。せっせと公開されている数字を見るくらいしかできない。以下の文章は、それだけのものである。

 さて、前回3回目の検証(415日)では、増加率の鈍化の傾向が明晰であったように思えたので、私としては少し踏み込んで、次の段階では徐々に鈍化の傾向が強まるだろうという予測めいたことも書いた。http://agora-web.jp/archives/2045469-2.html 

そこから5日間は、その通りに進んできている。

 日本のメディアは、感染者数が少ない日は何だか元気がなく、感染者が多いと興奮を隠しきれず「史上最高の一日の感染者数」と騒ぐ。しかし一日の感染者数を、陸上競技のようにとらえ、最高値が一度出るとそれが公式記録になるかのように考えるのは、間違いである。まず検証すべきは感染拡大のスピードであり、それは一日ごとの絶対数だけを見ていてもわからない。

 統計処理をする際には3日移動平均値でグラフを作っていったりする。世界中からチェックされているFinancial TimesJohn Burn Murdoch氏は週単位の移動平均で統計処理している。https://www.ft.com/coronavirus-latest たとえば、東京などを見ると検査体制などに曜日によるムラがあるのは織り込み済なので、日本の場合も週単位で見ていくのは理にかなっているように思える。(なお東京のPCR検査数が恣意的に減ったり増えたりしていると主張する方もいらっしゃるが、PCR検査数も週単位で見るとそのような傾向は見られない。)

 Murdoch氏の「片対数スケール」のグラフでの一日あたり感染者の主要国比較を見てみよう。

John Burn-Murdoch/Financial Timesのデータ)https://www.ft.com/coronavirus-latest 

水色の線の日本(Japan)のDay 135日である。日本が320日頃から増加のペースを上げたのがはっきりわかる。ただ、それでも欧米諸国が経験したほどではなかった。そして日本の感染者数の増加スピードは、最近になって鈍化し初め、横ばいになり始めている。

安倍首相は、47日に緊急事態宣言を発出したが、その際の以下の発言は、45日の時点の東京都の感染者数のデータを基にしたものであった。

――――――――――

東京都では感染者の累計が1,000人を超えました。足元では5日で2倍になるペースで感染者が増加を続けており、このペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1か月後には8万人を超えることとなります。

――――――――――

419日は、45日からちょうど2週間がたったところである。5日で1.3倍のペースにまで落ち、東京都の感染者総数は1万人には到達しなかった・・・、それどころか、ようやく3,000人を超えたようなところである。これから2週間での8万人到達は、相当に確率が低いように見える。(・・・おっと、これは学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続けている専門家に禁止されている発言か。)

すでに過去の「検証」で指摘しているように、3月下旬に急速な増加を見せた東京(日本)の感染者は、325日小池東京都知事「自粛要請」の効果が見え始めるはずの42週目には、増加率の鈍化を示していた。今はさらに緊急事態宣の効果も徐々に加わってくるところである(潜伏期間は14日だが大多数の発症者は感染後56日で発症する)。そのため私は、すでに前回の5日前の414日時点の数字を見た「検証」の時点において、合理的な推論としては、今後さらなる増加率の鈍化が見られるだろう、と書けたわけである。

あらためて東京の様子を見てみよう。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/ 各週の様子を、最後の累積感染者数(括弧内はその週の新規感染者数)と、一つ前の週と比べたときのそれぞれの増加率を示すと、以下の通りである。

41319日:  3,082人(1,015人): 1.49倍(0.97倍)

4612日:   2,068人(1,036人): 2.00倍(1.72倍)

330日~45日:1,032人(602人): 2.4倍(2.06倍)

32329日:   430人(292人): 3.11倍(6.08倍)

このように3月下旬に急激に上昇した増加スピードは、325日小池都知事「自粛要請」の効果が徐々に出始めるにつれて鈍化し、さらに緊急事態宣言の効果も徐々に加わってきたはずの直近の週でさらなる鈍化を示した。

画期的なのは、一週間の新規感染者数が、前週の新規感染者数を下回ったことだ。これは、特筆すべき注目点である。(・・・おっと、これは学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続けている専門家に禁止されている発言か。)

同じ様に全国の様子を見てみよう。(https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

41319日:  10,219人(3,603人): 1.54倍(1.05倍)

4612日:   6,616人(3,425人): 2.07倍(2.21倍)

330日~45日:3,191人(1,544人): 1.93倍(3.52倍)

32329日:   1,647人(438人): 1.62倍(1.73倍)

全国規模では325日小池都知事「自粛要請」の影響が小さいが、それでも4月に入ってから増加率の鈍化が見られ、緊急事態宣言の効果が徐々に出ているはずの直近の一週間で顕著な増加率の鈍化が見られる。非常に重要な点だが、週ごとの新規感染者数が1倍程度になっているのは注目点である。

ちなみに、当然だが、累積感染者数は、常に1倍以上である。したがって当面の重要到達地点は、新規感染者数(それぞれのカッコ内の数)の1倍以下だろう。東京ではすでにそれを達成し、全国においてもほぼ達成してきている。

私は、これは国民の努力の結果として、素直に好意的に見ていい数字ではないかと考えている。(・・・おっと、これは学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続けている専門家に禁止されている発言か。)

さて、安倍首相は、47日に次のようにも発言していた。

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しかし、専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。

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この目標設定の「2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、」の点だけを見ると、宣言から12日間がたった時点で、かなり着実な緊急事態宣言の効果が表れてきている、と評価できるように思える。東京都は、すでに増加率1以下を達成しているので、あと2日間の平均新規感染者数が180を上回らなければ、緊急事態宣言から2週間後の421日に、週移動平均で増加率1倍以下としての「ピークアウト」という安倍首相の目標を達成する。(・・・おっと、これは学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続けている専門家に禁止されている発言か。)

すでに過去の「検証」で指摘したように、安倍首相の緊急事態宣言会見は、「医療崩壊を防ぐ」という目的の説明で始まっていた。今後、56日までの間に、医療体制の拡充と総合して勘案し、どこまで減少させることが「医療崩壊を防ぐ」ことになるのかの査定をすることになるはずだ。

ところが、日本国内の議論は、そのように進んでいない。そして安倍首相の行動は何もかもが失敗続きだという評価が広がっている。なぜだろうか。

実は、西浦教授が、各種メディアを通じて、「8割削減」すれば収束できるというバラ色の未来を語り続けているからである。そのバラ色の西浦教授モデルを達成するには、崖を飛び降りるようなジャンプ急降下があるかどうかが試金石になる。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57610560T00C20A4MM0000/?fbclid=IwAR0FLPQr3uOlBDUvGfYgBKCfvMH3ksABAtgE6HVkxxxEVQ4144d6lQ-auL4 

しかし、西浦モデルを現実のものとするのは、大変な試みである。そもそも抽象的なモデル計算上の「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減」という命題を、12千万人の1か月の生活にあてはめて計算可能な尺度として運用することは不可能だ。

416日に変更された新型コロナウイルス感染症対策本部決定 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」には、「30日間に急速に収束に向かわせることに成功できたとすれば、数理モデルに基づけば、80% の接触が回避できたと判断される。」(3頁)という記述がある。https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622473.pdf 

要するに、8割削減が収束をもたらすというよりも、収束したら数理モデル上の8割削減があったとみなす、ということなのである。

「国民全体の人と人との接触機会の8割削減」など、計算できるはずがない。抽象的な条件にもとづく架空の想定モデルの中の話だ。だから、収束したら8割削減があったとみなす、としか言えないのである。

どうやって戦争に勝てるかと言えば、勝てる力を持ったときだ。だから勝てる力を持つまで頑張れ。勝てる力を持てば必ず勝てる。という話なのである。

西浦教授が指導する大衆動員運動では、国民が8割の移動の減少を果たしていない、ということを、ひどく問題視する。なぜかと言うと、西浦教授が、「8割減少」による「収束」を情熱的に強く追い求めているからである。

https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200414-OYT1T50041/

https://www.asahi.com/articles/ASN4H3J87N4HULBJ003.html

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200415-00000033-mai-soci

だが、新聞の見出しが与える印象とは異なり、「欧米並みのロックダウン」で、事態を「収束」させた国など、世界に一つもない。中国共産党並みの武漢の激烈ロックダウンで2カ月半かけてようやく収束宣言に至ったが、実際には今現在も感染者は発生し続けているのが実情だ。それにもかかわらず、西浦教授は、その天才的な洞察力で、世界のどの国も達成できていないことを、日本だけは達成できる、と新聞やSNSなどを通じて啓蒙し続けている。

私も検査技師・保健所を含めた医療関係者の現場の方々への感謝と尊敬心は持っている。、何としても医療崩壊は防ぎたいという政策に全面的に同意し、人並みに自宅にこもっている。しかし、「収束」まで行かなければ、それは国民が努力を怠ったことを意味する、と脅かされると、意気消沈してくる。

大変に僭越な言い方だが、西浦教授のグラフだけを頼りにして、世界に前例がない課題を達成するのは、私のような一市民にはあまりにも壮大すぎる課題だ。上述のように、「8割削減」の定義は、結果として収束するかどうか、なので、西浦教授は絶対に失敗しない。失敗したら、ただ国民が怠慢を叱責されるだけだ。非常に苦しい取り組みである。

クラスター対策班が最後の一人の感染者を処理し、大々的に収束を宣言する記者会見を行うまで、私はこのまま脅かされ続ける運命なのだろうか。

それにしても、そもそも数字を超えた真実を知る専門家の方々にとっては、増加率が鈍化しているかなどはどうでもいいだけでなく、幻のようなものでしかないのかもしれない。国民は、「まだ42万人死ぬ可能性はある!」「すでに感染爆発は起こっているが日本政府が隠しているだけだ!」と言われ、歩み続ける。

学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続ける渋谷氏のような専門家を、私などあえて否定するつもりはない。学者生命を賭けて「感染爆発」を主張し続ける渋谷氏は常に永遠に正しいのなら、渋谷氏が正しいのだろう。

三流学者の私は、ただ単に数字を見てわかることを書くだけだ。

ただ、なぜ、渋谷氏が新聞やテレビで主張していることは常に絶対に正しいのか、その理由は、私には皆目見当がついていない。

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