今週初め18日に「人権問題くらいでは、左右の大同団結はできないのか」、という題名の文章を書いた。http://agora-web.jp/archives/2042728.html 他国での人権侵害の問題に憂慮の念を示すのに、国内政治における左右の立場の違いは関係がないはずだ、という趣旨で書いた。自民党の中には、憂慮を表明する勢力があるのだから、野党側が黙っているというのはおかしいのではないか、という趣旨であった。
正確を期するために言っておけば、共産党は、中国における人権侵害の実情に憂慮する声明を14日に出していた。https://www.jcp.or.jp/web_policy/2019/11/post-821.html 立憲民主党は代表談話を21日に出した。礼儀の問題として、私としてもそのことについて触れておきたい。
現在進行中の「桜を見る会」の話題では、他の野党の政治家たちのほうが騒いでいる印象があるが、もともと調査をして問題提起をしたのは、共産党の田村智子議員であった。いわゆる調査能力において、共産党が、支持政党層をこえて高く評価されていることは、周知の通りである。選挙法がらみの問題や不倫などの生活に関する問題などの「身辺問題」や、個人情報をさらす文書の公開や的外れの失言などの失態について、共産党議員の話は、あまり聞かない。国民の多くが必要だと考えている日米安保体制に真っ向から反対を唱えているため、国政において大きな勢力を築いたことはない。しかし日米安保体制の評価が関係ない地方議会においては、共産党が巨大な勢力を持っていることも、よく知られている。地方議員数は2,800人以上で、特に市区町村レベルでは自民党より多い(公明党にわずかに及ばず2位)。
テリー伊藤氏が執筆した『お笑い革命日本共産党』(1994年)という本を読んだことがある。テリー伊藤氏が、冷戦が終焉したときこそ、最も注目すべき躍進が期待される政党は共産党だ、という主張をされていたと記憶している。テリー伊藤氏の主張(もともと少しおどけたトーンが含まれていたわけだが)は、必ずしも現実のものになったとは言えない。しかし共産党が依然として日本の国政で独特の存在感を持っていることは、否定できない。
日本共産党の歴史には、裏話としてしか語られない様々な暗部がある。「代々木」と呼ばれていた時代を体感として知っている世代には、特にそうだろう。鉄の結束のようなものを感じさせる反面、個人プレーがなく、長期に渡る同一党首の君臨とスター議員の不在が、構造的な問題ではある。最近では、政党交付金拒絶の伝統を、『赤旗』購読者激減の時代の中で、どう維持していくか、と言った問題に直面しているとも言われる。だが何と言ってももったいないのは、共産党の外交政策観だ。
しかしひとたび改憲がなされてしまったら、どうだろうか。自衛隊の合憲性のみならず、日米安保体制の合憲性も明確になる改憲がなされてしまったら、どうだろうか。共産党も、改憲の暁には、新憲法に従うしかないのではないだろうか。その時は、共産党にも、新しい時代が訪れるだろう。
あやふやな憲法学通説の怪しい権威に訴えて自らの政治勢力の温存を図る勢力によって、日本の政治は停滞している。改憲が果たされれば、国政に新しい構図がもたらされるだろう。
2年ほど前に、「改憲の鍵を握るのは、枝野幸男氏だ」http://agora-web.jp/archives/2029204.html という文章を書いたことがある。野党勢力は、軍国主義を防ぎたいというのであれば、私の本でも読んで国際法による自衛権の制約をよく勉強していただいたうえで、むやみに改憲反対だけを唱えないことが得策だと思う。
https://www.amazon.co.jp/憲法学の病-新潮新書-篠田-英朗/dp/4106108224/ref=sr_1_2?qid=1574423318&s=books&sr=1-2
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コメント一覧 (4)
「政府解釈」氏が端なくもカ氏との遣り取りで指摘したように、今なお、⇒【言及されるのを嫌う「破壊活動防止法の調査対象団体」】(20日・4)なのはそのためだ。公安調査庁が終始、監視の目を怠らない。機関紙「赤旗」を定期購読(宅配)しただけでシンパ乃至は同調者として「マークされる」という、まことしやかな話もあるくらいだ。
にこやかな笑顔で平和を説き、社会的弱者に寄り添い、不当な差別や支配を受け苦しむ、権力や社会の実質的支配層の蚊帳の外に置かれた名もなき善良な人々が企業や行政から不当な扱いを受ければ、真っ先に相談に応じたりもする。社会的正義と公平を訴え、政権を厳しく糾弾する姿勢もおなじみだ。つまり、地域での存在感は立憲民主や国民党などの比ではない。対抗できるのは支持層が創価学会の構成員が中心と偏っているが公明党ぐらいだろう。
その政策はある意味単純明解だが、憲法9条の墨守、日米同盟の解消や将来の自衛隊の武装解除を含めた安全保障や善隣友好外交、大企業や資産家・高額所得者への課税強化、社会福祉関連予算のさらなる拡充、消費税の廃止など、「軍事費を削って年金、福祉、教育の充実を図る」と、有権者に負担を強いる分野となると極端に手厳しい、というか退嬰的だ。さまざまな分野、領域で現状に不満を抱く層の見方=御用聞きであり相談役、伝声管の役割を担っている。
政権に無縁だから綺麗ごとを並べるだけで、非現実的かつ独善的だとの批判も絶えない。
もっとも、地方議会でも圧倒的多数派は、敢えて自民党を名乗らない、多くは「自民党籍」を有する保守系無所属議員だから、共産党が⇒【巨大な勢力を持って…地方議員数は2,800人以上で、特に市区町村レベルでは自民党より多い(公明党にわずかに及ばず2位)】のは、割り引いて考えるべきだ。
共産党ないし所属議員の「調査能力」も同様だ。しかし、国家、地方を問わない公務員やさまざまな組織に共産党のシンパや同調者は存在するから、情報のリークに加え、提供された情報を、保守系や他の野党のように黙殺または握りつぶしたり、中途半端に扱ったりしないから、共産党に情報提供すれば何らかの形で確実に表沙汰にできるという目論見が提供者側(時に内部告発者側)にあるのは事実で、共産党は重宝される存在となっている。
メディアの人間でも自社で報道しづらいものは、必ずしも共産党でなくても余所に提供したりする。
戦後の共産党の歩みは、敗戦直後の蜜月から冷戦とともに権力側が弾圧、監視を強めたことで武装闘争にシフトしたり、それを「極左冒険主義」として封じた六全協以降の選挙を通じた多数派形成が今日までの主な流れだが、党綱領で「革命路線放棄」を明示したわけでもない。ソ連、中国共産党との確執もあり、マルクス・レーニン主義に代わる日本独自の科学的社会主義といっても、意味不明だ。
憲法擁護も現在の党勢を維持する方弁で、改正されても本質が変わるとも思えない。代々木=党中央の支配は相変わらず根強く、変われば「埋没」するだけだからだ。
誠に結構なお題目で、政治的には未熟なところも否定できない善良な市井の人々は容易には反論できない。そうした市民の目線で違和感を列挙すれば、以下のようになろうか。
言われていることは、確かに御説ごもっともなところが少なくない。しかしひっかるのは、本当に米軍抜きで、自衛隊だけで日本の安全と独立が守れるのか、国際社会はそんなに甘くないのではないか。「結党以来一貫して追求してきた唯一の政党」と他の政党に対して常に優位性を語るけれど、共産党は確かに金権体質とは無縁で、政党交付金も受け取らずご立派だけれど、どこか杓子定規で独善的なところがあるから親しめない。「前衛」志向にもついていけない。
さらに、戦前の非合法時代、過酷な弾圧を受けても確かに獄中で非転向を貫いた徳田球一や、戦後長らく最高指導者として党を今日に導いた宮本顕治は筋が通っているかもしれないが、特に宮本体制が確立して以降は宮本をはじめ東大出のエリート(→不破哲三→志位和夫でみな東大卒=志位氏は宮本の長男の家庭教師)ばかりがトップで、エリート臭がプンプンして冷たい印象を受ける。
戦後直後に「愛される共産党」というキャッチフレーズで「平和革命路線」を提唱した元議長の野坂参三のようにスパイの嫌疑で除名された指導者も少なくなく、路線闘争に名を借りた権力闘争や内部対立には陰湿なものを感じる。一枚岩の結束を図るのは、今なお公権力によって破壊活動防止法の調査対象団体であることや、「あいつは赤だ」との偏見に基づきいたずらに白眼視する世間に対抗する以上、自己防衛として已むを得ない側面もあるが、それにしても組織の閉鎖性は覆い隠しようもない。
いろいろ庶民感情を列挙すればきりがないが、最大公約数的な違和感、反発はそうしたものだろう。
下部組織の共産党員は善良な人物が少なくない。「前衛」を楯に偉ぶったりもしない。私も労働組合の高級幹部のころ、親しくなった人物から入党を勧められ、断ったことがある。
私は根っからの「保守反動」を自認しており、共産党が従来の教条主義を捨てて科学的社会主義を強調するようになった後でも、その根底にある弁証法的唯物論に極度に批判的だったからだ。私はマルクスを越えて、その根底にある俗流ヘーゲル主義、「矛盾の激化」の果てにこの世は理想状態に近づくという多くの共産党員の希望に、理論的に冷淡だった。
多くは反米である彼らの戦争観、安全保障論も凡庸で陳腐なものだった。同じ人間としては胸襟を開いて共通の敵と戦えても、どこまでも交わらない線だったようだ。
憲法改正によって活路を見出すような「物わかりのよい」共産党なるものは幻想だろう。牙を抜かれた狼には存在理由がない。
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